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2007年10月18日(木) |
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ワースト |
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「この夏何してたの?」
恋。
「進行形?」
終わった。
「どうだった?」
忘れた。
時間の無駄だった、と思う。
ひとつ思い出した。 消えたい、が口癖だった。
今思うよ。 いいね、それ。
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2007年10月17日(水) |
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秋 |
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女は不意に屈み、地面に手を伸ばした。 はい、と目の前にさしだされたのはドングリだった。
「くぬぎの木のかな?これ。」
僕の答えを待たず、女は目の前の大きな木を見上げる。 女は木の幹に身体を預け、まるで愛おしむようにその太い幹に両手を回す。
「あはは。腕、回らないよ。」
振り返った女は愉しそうに笑い、そのままクルリと身体を反転させた。
「ここでしよう。」
女はくぬぎの幹に手を突いたまま座り込んでる。 膝に引っかかったままの下着。 ブーツのヒールには腐葉土。
女はまだ収まらない呼吸を無理やり押さえつけて言う。
「スカートに飛んでないよね?」
うなじに張り付いた髪の毛。 くぬぎの幹に添えられた女の指は、イったときのまま広がってる。
「君は蝉みたいだね。」
「セミ?」
「木に止まり、大きな声を出す。」
「あはは。」
女は声をあげて笑った。
蝉は、来年の夏もこの森で鳴く。
でもそこに、 今年鳴いた蝉は、いない。
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2007年10月11日(木) |
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酒を飲み、セックスをし、たまに血を流す。 |
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君は僕に背中を向けて、携帯に向かってひそひそと何か囁いてる。 僕は視線を下げ君の足を眺める。 膝裏の静脈の青く透けた足が妙に艶かしい。
電話をカバンにしまった君は、眉毛を少し寄せた顔で振り返り、 「ごめん。会社からでした。」 と早口で言った。 口先をアヒルのように尖らせ笑う。
その顔、君が嘘を誤魔化す時に必ずする顔だと教えてあげたかった。 そして女はみんな同じような顔で嘘をつくとも教えてあげたかった。
もっともそれは、女に限ったことではない。 僕もたぶん似たような顔で嘘を誤魔化しているんだろう。
君は腕を組んできた。 並んで歩く時はお互いの表情を読んだりはしない。 僕はもう君のついた嘘など忘れ、アーウィン・ショウの小説みたいに渋谷の街を歩くキレイな女たちをより多く視界に入れようとする。
酒を飲み、セックスをし、たまに血を流す。 女は簡単にできてる。
ただし、 酒を飲み、セックスをするだけの男よりは、多少なりとも複雑だ。
「お腹すいちゃった。」 君が囁く。 「飲むような処でいい?」 君はニッコリ笑う。
女は酔うと顔色が蒼白になる。 ラブホテルの薄暗い照明の下でみると青磁器みたいに見える。 さっき眺めた膝の裏の静脈の青をふと思い出す。
僕もニッコリ笑う。
依存心と自尊心。 酒とチョコとジャンクフード、それにコミックとHMV。 青山に路面店のあるようなブランドの服と、キレイに塗れたネイルとキレイに巻けた髪。 嘘ついた後のアヒル口。青磁器みたいな肌。 そこに水を注げばたぶん君になる。
ようするに、 どこにでもいるような女だ。
でも僕は、 そんな君が大好きだよ。
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2007年10月05日(金) |
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Cassandra |
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ギリシア神話に登場する悲劇の予言者として知られるトロイアの王女。 アポロンから予言の力を得たものの、その求愛を拒絶したため誰も彼女の予言を信じないようにされてしまう。 トロイアの悲劇を予言するものの誰も耳を貸さず、結果トロイアは滅亡、自身も神殿で陵辱されたのち戦利品として連行されたミケーネで殺される。
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2007年10月04日(木) |
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Electric Warrior |
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「電気の武者(エレクトリックウォーリアー)は、僕の書いた小説の登場人物で、別に自分のことを言った訳じゃないですよ。そいつは楽器を持った人間で、ギターとは書きませんでしたが、それが彼の心臓に接続されていて、その楽器を弾いて人々を殺してしまうんです。」
マーク・ボラン
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2007年10月03日(水) |
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sister of Troy / introduction |
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この世界には。
この世界にはsister of Troyと呼ばれるコンピュータウィルスがある。
sister of Troyはコンピュータネットワークを介在して流通する音楽ファイルの形で存在する。
sister of Troyに感染したPCは一定の潜伏期間の後発症する。
sister of Troyの最大の特徴は人間にも感染することである。
sister of Troyに感染した人間は一定の潜伏期間の後発症する。
sister of Troyが発症した人間は。
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