in love with...
沙夜



 捌け口

Hくんと電話したのは13日深夜のこと。
かれこれ2週間経つが、あれから何かっていうと
ちょこちょこ連絡(というか、報告)がある。


Hくんは変わった。180度 変わってしまった。
“恋する男”じゃなく、“恋する乙女”のように。


「男がちまちま携帯メールなんかやってられないよ」と言ってたHくんが
日に2〜30通、彼女とやりとりをしてるらしい。
(ついでに、私にも惚気メールを送ってくる)


そして、


「彼女は僕の運命の人」
「彼女のことは絶対に離したくない」
「彼女の為なら何でも出来る。彼女の為なら死ねる」
「彼女とだったら結婚したいと(ひとり密かに)思っている」
「彼女が僕のことを、本当に好きなのかどうか分からなくて不安」
「逢いたいよー」「寂しいよー」


と、切々と訴えるのだ。


この私に。


(なんか言う相手、間違ってない?)


つい、「あのね、私、Hくんに振られた人なんですけど」と嫌味のひとつでも
言いたくなる。


「すみませんね〜。こんなこと他に話せる人いないんだよ〜」
「沙夜に聞いてもらって、ホント救われたよ〜」


そんな風に言われると私も弱い。


だけど、この2週間。
Hくんの胸のうちを色々聞いてあげて、よーく分かった。


いかにHくんがF子さんにメロメロかということ。
いかにF子さんが魅力的な女性であるかということ。


そして昔も今も
Hくんにとって私は、何かしらの“捌け口”でしかないこと。


Hくん。
私は、嬉しかったよ。
Hくんが、この7ヶ月間、少しでも私のことを気にしてくれてたこと。
このままフェイドアウトすることも出来たのに、連絡くれたこと。


この7ヶ月の間に、Hくんに対する恋愛感情は無くなったけど
今でも嫌いじゃないよ。
何故かしら憎めないんだよね。


Hくんには幸せになってもらいたいな。
いや、強運の持ち主の君のことだから、きっと幸せになるだろうね。


Hくんが、大好きだったバイクをほったらかしにしてしまう程
心から愛する女性と出逢えたんだものね。良かった。本当に良かった。


ずっと仲良くね。
応援してるから。


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2003年04月28日(月)



 和解?

「おひさしぶりでございます」


電話での会話は、Hくんの堅苦しい挨拶から始まった。
7ヶ月振りに聴くHくんの声。
やや緊張しているように感じる。


私は、いつかこの日が来ると分かっていたんじゃないか
と思えるくらいに、落ち着いていた。
(こんなに早いとは思ってなかったけど)


人は時折、古い引き出しを開け、色褪せた想い出を引っ張りだし
過去の感傷に浸りたくなるもの。
そして気紛れに「元気?」とメールする。


でも、今回Hくんが私にメールした理由は
過去の感傷でも気紛れでもなかったようだ。


「彼女が…、出来たんだ」

「あ〜。F子さんでしょう?」

「えっ!どうして分ったの?」

「そりゃあ分かりますよ。掲示板でのお二人のやりとり見てたら」

「そうかぁ。知らぬは当人ばかりなりってやつかぁ」

「ふふ、そうよ」


前から、F子さんのことは知っていた。
昨年の秋くらいから、二人で逢ったりしていることも。
私は、とっくに付き合っているのだと思っていたけれど
正式に恋人関係になったのは、ごく最近らしかった。


「沙夜のこと、ずっと気になっていたんだよ。
 メールや電話だけの友達になるか、それともすっぱり
 連絡を取り合うのを辞めるのか。どちらにするにしても
 話し合わなきゃって」

「そんな風に思ってたの?
 私、放置のままのフェイドアウトかなって。
 何ヶ月も音沙汰なしだったでしょう。 
 Hくんにはもう徹底的に嫌われちゃったとばかり」

「いやいやそんなことないですよ。
 沙夜は、僕がどんな気持ちでもいいから付き合いたいと
 言ってくれてたけど、僕としてはずるずると曖昧な関係を
 続けるのはイヤだったんだ。
 こんなんじゃこの先、ちゃんと彼女も出来ないなって思ったし」


ここで私は
(だったら、私を彼女にしてくれれば良かったのに)
という言葉を飲み込む。

でも仕方ないよね。
だってHくん、彼女にする程私のこと、好きじゃなかったんだものね。


「あのね、私にも彼がいるの」

「えーっ、そうなのー?
 なんだ〜、だったら早く教えてくれれば良かったのにー。
 僕は沙夜が思ってる以上に、深刻に悩んでいたんだからー」

「だって…彼が出来たなんて、私から言える状況じゃなかったもの。
 今だから笑って話が出来るけど、一時期はとても辛かったのよ。
 Hくんの誕生日にプレゼントを送って、それで何のリアクションもなかったら
 完全に諦めようって決めて…。
 その後、一生懸命気持ちを切り替えたの」

「うーん。そうだよねぇ。すみませんねぇ」


そうだよねぇって…本当に分かっているの?
でもなぜかしら、憎めないHくんのキャラ。


「今は大丈夫よ。
 ある意味、彼と出逢えたのは、Hくんが私を振ってくれたおかげだし。
 感謝しなくちゃいけないかもね」

「いや〜、そんな風に言ってくれると肩の荷が下りますよ」


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2003年04月19日(土)



 「おひさしぶり」

メールの差出人は・・・Hくんだった。


Hくんと最後に逢った日から、どれくらい経ったろう。
指折り数え、7ヶ月近くになることを知る。


どうして今頃?
いや、7ヶ月過ぎた今だから?


しばらく彼の名前をぼんやり見つめ
それから、ゆっくりした動作でメールを開いた。



「おひさしぶり。

 電話してもいい?」


と、だけ書かれた短いメール。



そういえば……
明け方近くの空に浮かんだ、2つの星座を見た時
私の頭に瞬間、Hくんのことがよぎった。


なぜなら、Hくんはさそり座で
頬に北斗七星のカタチのホクロがあったから。


波瀾含みの旅は終わったと思ったのに
最後に待っていたのがこれなの?


はぁ〜っと、ため息が出た。


Hくんの話ってなんだろう?
彼がこのことを知ったら?
私はどうしたいの?


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2003年04月18日(金)



 無口な 旅の終わり

旅の終わりには、あの“恐怖の振り子電車”が待ち受けていた。


彼が「バスで帰る方法もあるよ?」と言ってくれて、私もかなり迷ったが
結局は“昼食抜き&爆睡で電車酔いを逃れる作戦”を決行。
それは成功した。


どうする?
駅に着いたら、そのまま帰る?


うーん…、そうだね。
帰ろうかな。


……そっか。


もう少し一緒にいたかった。
でも、そこから更に長い時間をかけて帰ってゆく彼の事を考えれば
その時そんなわがままを口に出来る筈もない。


感情を押さえ込み、私は無口になる。
無口で、不機嫌になる。


そして彼をホームで見送ることもせず、素っ気無い態度で「じゃあね」と
別れてしまった。


本当は……、見送りたかったのに。
しなかったのは、笑顔で見送る自信がなかったから。
大泣きしちゃいそうだったから。

私、いつも、わがままでごめん。




夢が叶ったのは、あなたのおかげ。
一生、忘れないからね。


ありがとう。



+++

帰宅して、PCのメールチェックした。

もう開くことがないと思っていたフォルダに、1通のメールが落ちる。


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2003年04月17日(木)



 満天の星空...2

ふと目が覚めた。
あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。


目を凝らし時計を見ると、午前4時を少し過ぎた所だった。
もう一度星が見たくなって、今度はひとりベッドを抜け出し
再びテラスへ出てみた。


3時の時より風が強く、森の木々がざわざわと音を立てて揺れている。
寒さに震えながら夜空を見上げれば、星の美しさにため息が出る。


空を凝視していたら、3時には見えなかったものが見えてきた。
ぼんやり白くて、雲のようなもの。
でもよく見るとそれは、おびただしい小さな星の集まりだ。


(あれは・・・もしかしたら天の川!?
 なんて綺麗。
 じっと見つめていると、吸い込まれそう…
 宇宙にはこんなにもたくさんの星があるんだ…)



あまりの星の数に圧倒され、恐怖さえ感じる。


しばらくすると、風の冷たさにぞくぞくしてきた。
これ以上は限界だと慌ててベッドに戻ったが…


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その後は・・・・・(泣)


『あまり幸せ過ぎると怖くなる。
 だから今回は、星空はお預けにした方がいいのかな』


などと私が書いたものだから、神様は星空を見せてくれる代わりに
幸せ過ぎて怖くならないよう不幸せもセットにして
バランスをとってくれたのかしら。


翌朝 彼に、天の川らしきものが見えたと報告した。


春でも明け方だと、夏の星座が見えるからね。それは天の川だと思うよ。

へ〜〜〜っ、そうなんだぁ。(感心)

いいなぁ、ひとりだけ見て。
僕も一緒に天の川見たかったなぁ。



ごめんね。私だけ見ちゃって。
今度は一緒に、暖かい所で、砂浜に寝転がって見よっか?(笑)


2003年04月16日(水)



 満天の星空...1

PPPP... PPPP... PPPP...


午前3時。
彼の携帯の目覚まし音が部屋に鳴り響いた。
私はがばっと飛び起き、ベッドルームからリビングに続く階段を降り
テラスに出た。
彼も私に続くようにしてテラスに出る。


月は姿を消し、ホテルの照明もすべて消え、暗闇が静かに広がっていた。
無くしたものを探すような気持ちで、私は空を見上げる。


星…、見える。たくさん見えるよ。
さっきの10倍。
ううん、30倍? もっとかな?



私の目が少しずつ暗闇に慣れてゆくと、ぼやけたファインダーの焦点があうように
夜空の星はその数を増してゆく。


ね、すごい、すごいよ。
あ〜、こんなだったら、星座の予習してこれば良かった。
星がありすぎて、何が何だか分からないよ。



ほら、あれはさそり座じゃない?
下に向かってしっぽがあるでしょ。



ほんとだ。
アンタレスが赤く光ってるものね。



はしゃぐ私に、彼は「良かったね。星が見えて」と微笑む。
後ろから抱きしめられ、私は頭を彼の胸に預けるようにして天頂を仰ぐ。
そこには北斗七星があった。


冷たい風が少しずつ体温を奪う。
ずっと見ていたかったけど、部屋に戻った。


沙夜、おいで。


彼の懐に滑り込む。


(あったかい…)


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2003年04月15日(火)



 星空が一番キレイに見える部屋

私達が泊まった部屋はメゾネットタイプで、広めのテラスが付いてた。
そこからの眺望は素晴らしい・・・んだろう。天気さえ良ければ。


ここは、彼が「星空が一番キレイに見える部屋をお願いします」と
予約してくれた部屋だった。


夕食を終え、部屋に戻ってきても雨はまだ降り続いていて
私は星ひとつ見えない真っ暗な空を、恨めしげに見上げた。


(天気予報では、夜になったら晴れるってあったのになぁ…)


その後も、ちっちゃなトラブルが続いた。

彼が近くの温泉に出掛けて行ったのに
シャワーの故障で、水しか出なかったこと。

部屋のバスタブが、お湯を張っても異常に冷たくて
私のおしりが冷え冷えになってしまったこと。

彼がバスルームを水浸しにしちゃったこと・・・などなど。


今回の旅行は、何かに祟られているのかと思わずにいられない。


0時半。
テラスに出てみると雨は止んでいた。
空高く月が出ていて、ぽつりぽつりと星が見える。


星、見えるね。
でもこれじゃ都会と変わらない…。


月が出てると、ダメだよね。

うん。
それにホテルの照明も邪魔してる。


3時頃、目覚ましかけてみよう。
見えるかもしれないよ?


そうだね。


午前3時の星空に期待しながら、私達は眠りに就いた。


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2003年04月14日(月)



 “恐怖の・・・”

電車に乗ってしばらくすると、気分が悪くなってきた。


おかしいなぁ。
私、電車酔いなんて、今まで一度もしたことないんだけど…
すごく気持ち悪い。どうしてだろ。



彼の肩にもたれて、私はぐったり。


あー、この電車はね、振り子みたいに揺れるから
酔っちゃうんだよ。
大丈夫?



駅弁をパクつく彼の横で、私は“あ〜”とか“う〜”とか
唸り続けた。


次、乗り換える電車は大丈夫だからね。
気持ち悪いの、治ると思うよ。



彼の言葉通り、この“恐怖の振り子電車”を降りたら
少しずつ元気になってきた。
乗り換えた電車の中で、しっかり駅弁を食べる私に
彼は驚いて(呆れて?)「食べたね〜」と笑った。
(でも少しだけでしょ。半分はあなたの口に運んだもん)


なんだかんだあって、無事ホテルに到着。
お茶した後、“恐怖のプール”に行き、“恐怖の水着姿”を披露。


彼の犬かきを見つめながら、カナヅチの私は不安を感じつつ…


ねぇねぇ、もし私が溺れたら助けてくれる?

う〜ん。
一緒に溺れてあげるよ。


溺れちゃダメじゃん。


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そ、それ、全然大丈夫じゃないから(怖)


冗談とはいえ、爽やかな笑顔で言われると、びびるってば。


2003年04月13日(日)



 最悪〜、な(?)旅の始まり

土曜の朝。
天気は週間予報通りの、雨。
旅行の支度をしていると携帯が鳴った。


(あ、もうそろそろお迎え?)


電話に出ると、挨拶もそこそこに彼の悲痛な声が。


沙夜ー。最悪〜!!

なに? どうしたの? 車が変なの?


レンタカーを利用しての旅行だったので、
へんてこな車を宛てがわれたのかと思った。


免許証、忘れちゃった。。。

えっ? だめじゃん。
ええっ!? …ってことは、どういうこと?


車、借りられないんだってー。

え〜〜〜っ!?
なにやってんの〜〜。


ごめんねー。どうする〜?

どうするって、まさか旅行やめちゃうの!?

いや、そうじゃないけど。
電車で行く?


…もちろん行くよ!


というわけで急遽、ドライブでの旅が、電車での旅へと変更になった。


(あはは。やってくれるなぁ〜。波瀾含みな旅になりそう)


雨の中、傘を差して歩きながら、私はなんだか可笑しくて
ひとりにやにやしながら駅へと急ぐ。


駅のホームで彼と落ち合い、特急電車に乗り込む。
『電車の旅もいいよね?』なんて明るく話していた彼だったけど
内心、めちゃめちゃ凹んでいただろう。


この後は順調に…かと思いきや。
1時間もすると、次なる波瀾が私を襲った。


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2003年04月12日(土)



 今週末、夢が叶う?

今週末は、彼と旅行です。
以前日記に「恋人と満天の星を見上げるのが夢」と書いたけど
もしかしたら、それが叶うかもしれません。


んが。


どうやら週末のお天気は全国的に良くないみたい。


宿泊先は、ずっとずっと前から、いつか行けたらいいなと思っていた所。
そこに泊まることも、私のいくつかある小さな夢の中のひとつ。
だから、たとえ星が見えなくたって泊れるだけで幸せ。
そりゃ見えたら、さらに幸せ度UPだけど。


でも、あまり幸せ過ぎると怖くなる。
幸せは続かない、と、心の何処かで思っているからかもしれない。


だから今回は、星空はお預けにした方がいいのかな。


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どよーん。



2003年04月07日(月)
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