妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2008年07月31日(木) 『Φは壊れたね』(小)『文学賞メッタ斬り!リターンズ』(他)

【森博嗣 講談社文庫】

新シリーズとなる、Gシリーズ一作目です。なんでG?
おいおいわかるかもしれません。

久しぶりに萌絵ちゃんサイドの話しになりましたが、視点は萌絵ちゃんが指導に行っているC大の大学院生が主なので、読んだ印象はVシリーズっぽい。

密室って状況が無理であればあるほど解答を導きやすいよね・・・という典型例。
森ミステリの密室としては、単純すぎたんではないかと。
動機がいまいち理解不能なのはいつものこととは言え、そこんとこ気になる人は不満の残る話しだと思います。
新シリーズの一作目としては、やや不安のあるスタート。
というかこのシリーズ、タイトルがいよいよ恥ずかしいな。

萌絵ちゃんが大人になっちゃったなぁという感慨と、ちょろちょろしてる犀川先生が相変わらずかわいい。

++++++++
【大森望・豊崎由美 PARCO出版】

2004年から2006年までの、芥川・直木賞を中心にして、文学賞を受賞作を語ってます。
冒頭は島田雅彦とのトークもあり、あるんだけど島田雅彦はまだ未読なのでなんとも言えないなー。

選考委員を斬るコーナーでは、阿刀田高先生が槍玉にあがってましたけど、私もいささかボケを心配してしまいました・・・どしたの、阿刀田先生。

しかし三年分を一気に斬ってるので、全体的に大味なのが残念。
芥川・直木賞のページは、ページ構成が逆じゃないかと。
候補作、候補作へのコメント、受賞発表後の感想、の順で並べて欲しいなぁ。
で、できればその後に選評を斬って欲しい。

しかししみじみと、どんだけ落ちてるんだ伊坂幸太郎。
そりゃあ今回辞退したくもなっちゃうよねぇと思いました。

それにしてもまほろ駅前〜で、チワワに着眼するあたりがさすがトヨザキ社長です。
豊崎由美にはケモノバカ代表として、傑作ケモノ小説書評集でも出して欲しい。すごい参考にしたい。
でも三浦しをんもBLが書きたかったわけではなく、むしろそうしたくはなかったんではないかなぁと思います。BL好きの業、のようなもので、男を二人出すとそのようにならざるを得ないんではないか、と勝手にフォロー。
フォローにはなってないかもしれない。

メッタ斬り!大賞はもはや飲み屋談義。読んでて楽しいけど毎年やらなくてもいいよ・・・少なくともこの方式では、と思います。


2008年07月29日(火) 『あのひととここだけのおしゃべり』(他)

【よしながふみ 太田出版】

よしながふみの漫画に関する対談集。鼎談もあるけど。
意外にも、かなり少女マンガに関する話しが多いです。
24年組を不勉強な私は、いまいち実感がわかないことが多々。
ぼちぼち読んではいるのですが、24年組の印象は一様に、怖い、なのでどうも大量に読めない。
でも、この対談でよしながふみが24年組の影響を大きく受けているというのを知って、ああ、私がよしながふみの漫画に感じる怖い感は、24年組に感じるのと同じものだな、と納得。

漫画の印象から、よしながふみってもっと怖い人というか、ストイックというか、鋭利な印象があったのですが、そういう厳しさは自分に向けられるもので、他人に対しては非常に大らかなのだなぁと感じました。

三浦しをんとの対談では、しをんにはもう少し今回唯一の小説家として、小説家サイドの意見を言ってほしかった・・・と。
BLと漫画にかける熱い情熱はわかった。じゃあ、小説家としては?と毎度エッセイなどを読むと思う。
別に適当に書いているとは思ってないんだけれど、寂しいじゃないか。

こだか和麻さんとの対談の中で、よしながふみの下の世代にとって「絶愛・絆・炎の蜃気楼は三種の神器」という話しが出ていて、まさにその世代です。はい、と。
でも、世代よりもう一つくらい下かもしれない。いえ、若ぶるわけではないですが。
で、私より下になるともうなんでもあったんだろうなぁ。
そして、こだか和麻が河惣先生に「ありがとう」って言われたエピソードが泣けた。
めちゃくちゃ感動的な話しだと思うんですけど!
云年ぶりにちゃんとこだか和麻を読み直そうか、という気分になりました。
もの凄い客観的に漫画描いてるんだなぁと感心してしまったので。

羽海野さんとの対談で、ウミノさんの方が年上なのに凄い驚いた。
いや〜わかってるはずなのに、ウミノさんって凄い若いイメージがずっとあるんですよね。

それにしてもスラムダンクって業の深い漫画だな。

そう言えば、本田透も言っていた、恋愛という宗教に関する話しもちらほら出てました。
よしながふみや三浦しをんは、恋愛が第一じゃないんだよねぇという感じで世の中を眺めてるのに対して、本田透がどうしても勝ち負け二元論に陥ってしまっているのが対照的。
もちろん前者に共感する。男女差を感じるなぁ。


2008年07月28日(月) 『世界一初恋 小野寺律の場合』(漫)『魔界都市ブルース 妖月の章』(小)

【中村春菊 角川書店アスカコミックスCL−DX】

まさかのアニメ化、そして4ヶ月連続刊行。
中村先生、死亡フラグ立っちゃうよ!といささか心配な感じですが。
あんまり読む気がなかったのだけれど、ついつい。
やり手編集長×新人社員ってのがそもそも、あまりツボじゃないので。
オレ様系の攻と、ツンデレな受という、ある種BL王道設定。
中村せんせーはいつも王道カップリングなのがすがすがしくもあり、物足りなくもあり。
中村せんせーが実はもっとパンチの効いたギャグを持ってる、パンチが効いたというかシュールなギャグも持ってるということを知ってるので、その辺の引き出し開けて欲しい気持ちもあります。

ところで、「もう一度俺を好きって言わせてやる」発言以降、脳内をモー娘がぐるぐるしてました。もいちど好きって〜♪てな具合で。

+++++++
【菊地秀行 祥伝社文庫】

魔界都市ブルースも七冊目。
他にも長編シリーズがあるので実質はもっといっぱいありますけど。
でもやっぱり、これが基本という感じがして一番好きです。

現実に疲れると魔界都市に行きたくなりますね。
行けないので読むのですが。

「花影」
ブルースらしい、哀しさと哀愁漂う話しです。
ラストの選択も切なくていいですね。

「森の彼方の国」
メフィストの部屋に一晩くらい泊まってあげたらいいのに、と思う前に、あの病院にやはり寝起きしてるんだろうか。ドクターは。
せつら以上に私生活が不明だ。

「別れ雲」
少年が登場するのがちょっと珍しい。
せつらに関して「気にならない性分―というより、見られるのが快感だとしか思えない」という描写があってへぇと思った。
長い付き合いだけれど、まだへぇと思うことがあるというのがうれしい。

「踊る戸谷さん」
衝撃の口絵ですが、内容もなかなか。
あの戸谷さんが痩せるなんて!と。
ドクターにも見せてあげたい。
末弥純もそう思ったのか挿絵にドクターがなぜかいる。

「寂しい劇場」
踊ったり舞台に立ったり、案外せつらは付き合いがいい。
なというか<新宿>らしい話し。

「迷い雨」
せんべい屋のアルバイトは女の子だけじゃなかったんだなぁと。
今まで女の子しかいなかったから、そういう主義なんだとばかり。


2008年07月24日(木) 『図書館内乱』(小)

【有川浩 メディアワークス】

今回は、郁の両親来る、柴崎、小牧にそれぞれ恋の予感、手塚兄現る、という3本柱です。あ、あと新館長赴任、もあったか。

小牧が、聴覚に障害を持つ幼馴染の少女に、同じく聾唖のヒロインが登場する小説を薦めたことが問題になる話し。
なかなか上手いとこをついてくると思います。
小牧の相手が確定してしまって、やや残念なんですが・・・。もう少しフリーでいて欲しかった。

郁の両親問題も、上手いなぁと。
設定の仕方が。
郁はがんばって、両親の了解を得てもらいたいもんです。

私的には手塚兄弟の動向が気になってしまいます。
にやにや。

柴崎と手塚がくっつかないでもらいたいんですが、というか、柴崎は堂上でいいじゃないですか。それが駄目なら郁でいいじゃないですか。

堂上と郁も可愛いのですが、今のままのぎゃーぎゃー言ってるのが好きなんだけどなぁ。甘甘なところが見たいような見たくないような複雑な心境。

作中では少年事件の実名を載せた雑誌が問題になってましたが、最近もありましたね。そういう事件が現実に。
扱うネタが興味深い。


2008年07月18日(金) 『からくりサーカス 36〜43』(漫)

一気に最後まで走りぬけて、読者サイドもぐったり。
よかった!と力強く言えないのが残念なんですが、だけど全43巻をなんとか一定の完成度でやり遂げたのはさすがなのでは。
中だるみもありましたけど。
藤田漫画でなければ満足したかも、というレベルの残念具合。

風呂敷を広げきったな、という話しでした。
う、宇宙ですか!?みたいな。
はたして最終ステージが宇宙なのは妥当だったのか、と思いますが。

うしとらと違って、大本の原因に恋愛が濃く絡んでいるのが、なんというか・・・失敗?
ヒロインのバリエーションが、天然、ツンデレ、母の3パターンしかない藤田和日郎に恋愛は向いていなんではと感じました。
壮大な兄弟げんか話しだったわりに最後は弟対決でどうなのかなぁと思ったり。

以下、残念だったなぁと思った点。

結局、勝、しろがね、鳴海の3ショットは表紙でしか見られなかった。再会させてよ!!これすごい残念。
勝、不憫。
不憫といえば、なんだか終盤やたらみんなに、しろがねのこと愛してんだろ〜といわれてて、ほっといてやれよ!と言いたくなる。
なんだか唐突だった。
そういう風にもっていきたいなら、勝の年齢を中学生くらいにしたほうが納得できたのに。
しかし、しろがねのこと好きになっちゃったんならそれはそれでいいので、なんか葛藤を少しでも描いておいて欲しかった。

フェイスレスが最期に謝るのは本当に兄でいいのか。フランシーヌじゃないのか、謝る相手は。
つーか、そもそも兄のほうが悪いんではないかと、過去編からず〜っと思っていて、兄弟共々どうにも共感できなかった。
そもそも改心の仕方も、なぜ、と思ったけど。

キャラ多すぎて脇キャラの見せ場が終盤駆け足。
リョーコとか正直、サーカスに入る意味は無かったと・・・。へーまもいいんではないか、と。
ヴィルマをもっと描いてあげてほしかったんですけどー・・・。
みんなサーカスに入れちゃうからそうなるんで、あとで再会したシャロン先生のような登場の仕方も感動的なのに。

アシハナ、初っ端から死亡フラグ立ちまくりのキャラで諦めつつ、どんな見せ場を用意してくれてるのか、と期待していたのですが、不満。
どっかでとにかく殺さなきゃならん!みたいなエピソードの挿入の仕方。不満。

たぶん、ここが不満なのは私くらいなんだろうけど、しろがね犬が可愛くなかった。なんでボルゾイにした。

さすがに43巻もあれば不満も多々出てきますな。
私は人間サイドのエピソードよりも、基本、オートマータ側のエピソードのほうが感動が大きかったなぁ。


2008年07月17日(木) 『からくりサーカス 22〜35』(漫)

【藤田和日郎 小学館サンデーコミックス】

折り返しに入りました。
怒涛の過去編で、しろがねの生い立ちやらフランシーヌ人形の行く末やら、黒幕の正体が明らかに。
ついでにギイの過去なんかも(ついでかよ)

私はたいていの漫画や小説における、過去編という名の因縁の起こりのパートが退屈なんですが、藤田漫画は他のに比べれば楽しく読める。

すっかり人が変わってしまった鳴海としろがねの再会や、しろがねの生い立ちを知ってしまった勝など、誤解、すれ違い、葛藤などなどてんこ盛りで、読んでてしんどい、もどかしい。

黒賀村編は小休止的な話しで、やや流れが停滞したような感もあったけれど、いよいよ最後の盛り上がりに入る模様。
心してついて行きたい。


2008年07月14日(月) 『からくりサーカス 21』『鈴木先生 5』『シグナル』(漫)

【藤田和日郎 小学館サンデーコミックス】

22巻以降がさっぱり見つからずじりじりしてます。
それにしてもとても一巻分とは思えない密度。
ジャンプ漫画にもこれくらいの密度が欲しい・・・。

「しろがね」達がほぼ壊滅状態の絶望的状況、わかっちゃいるけど鳴海の復活という感動と最古の四人の破壊、そしてフランシーヌ人形の真相、という怒涛の流れ。
凄い絶望感の21巻ラストです。
つーづーきーっ!

+++++++
【武富健治 双葉社アクションコミックス】

藤田漫画とはまた別種の熱さのある鈴木先生。
読んでる間ひたすらすげぇ・・・という気持ちしか湧いてこない。
鈴木先生は、金八先生ともヤンクミともGTOとも全く違う。ものすごく突飛なことをするわけでもない。
なのに金八先生を真似できても、鈴木先生を真似することはまず無理ではないかと思う。

この漫画のほかの学園物と違うところは、いたって普通の生徒に焦点を当てているところだったのだけれど、この巻はさらにその普通の手のかからない生徒の内面に踏み込む、鈴木先生の教育方針を決定付ける事件が語られる。
テレビドラマの学園物が他人事にしか思えなかった、学生時代を送ったことのあるいたって平凡な人たちはきっと丸山さんの心理に、思い当たることがあるはず。
卒業してもう何年も経つのだけれど、なんだか救われた心持になる。
それは鈴木先生のおかげというより、そんな微細な部分を拾い上げてくれる武富健治に対して感謝したい。

夏休み入ったとたんやらかした鈴木先生が、次巻、小川さんと中村さんにどう対峙するのか気になるところ。
しかし鈴木先生の彼女になるだけあって、麻美さんも只者ではなかった。

+++++++
【日高ショーコ 芳文社花音コミックス】

『嵐のあと』の榊が出てるので読んでみた。
印象違うな〜。

さておき、表題の二人より、後半に収録されてる高校生カップルのほうが好きでした。
このツンデレはありだ。
ありとなしの境目が自分でもよくわからないので、今後の分析課題かな、と(どうでもいい)

しかし日高さんの漫画はS率が高いなー。


2008年07月13日(日) 『アイツの大本命』(漫)

【田中鈴木 リブレ出版ビーボーイコミックス】

不細工に惹かれて読みました。
でも表紙を見た第一印象は、不細工じゃないやん!(フットボールアワーのネタみたいな)でしたけど。
いやいや、全然不細工じゃないよ、吉田君。
むしろ私の好みの範疇の顔だよ。
終始、拾ってきた野良猫みたいで可愛かったです。
とりあえず、がんばれーがんばれー、吉田君!と思いました。もうちょっと粘ってもらってもいいと思います。
ひょっとしてこれ、続いているんでしょうか。
2巻が出るならもうちょっと焦らしてやるといい。

BLは美形インフレが起こっているので、ここらで不細工ブームが到来するとすごくうれしい。
不細工ってかわいくないですか?


2008年07月12日(土) 『てりふり山の染めものや』『好き好き大好き超愛してる。』(小)

【おちのりこ 偕成社】

児童書です。
てりふり山に越してきた染色家のとしさんは、そこで女の子とその家族に出会って見たこともないようなきれいな染物を見せてもらう、という話し。
四季折々をそのまま染めたような染物を染める方法を、としさんは最後に見せてもらうことになる。

典型的な毒にも薬にもならないタイプの児童書でした。
うん、あぁそう、という感じです。

++++++++
【舞城王太郎 講談社文庫】

舞城が挑む難病モノ、かと思ったら、裏のあらすじにあるように「恋愛と小説をめぐる物語」でした。
舞城がいつでもストレートに饒舌に小説を物語っている、ということを改めて認識する。
さまざまな形で、死んで行く彼女、死んでしまった彼女、が描かれる。
これを読んで『世界の中心で愛を叫ぶ』のようなストレートな感動を得ることはないだろうけれど(まあちなみに読んでないんですけど)、彼女が死んで悲しい、愛する人を失うのが寂しい、というそういうことよりももっと踏み込んでいるのは確かで、愛するということへの舞城なりの回答が最後に提示される。

愛する人が死ねばそりゃ悲しい。でもそれだけの物語が多すぎる。
悲しいよね、というだけのものが多すぎる。
それだけで物語りになるのだろうか、と思う人への一つの答えであり、舞城小説のターニングポイントという気がする。


2008年07月11日(金) 『犬身』(小)

【松浦理栄子 朝日新聞社】

かなり変な小説でそしておもしろかった。
主人公の房恵は犬化願望を持っており、あるとき出会った愛犬家で陶芸家の女性の犬になりたいと望み、謎めいたバーのマスターに魂と引き換えの契約を結んで犬になる。そして、望み通り陶芸家の梓の飼い犬になるのだけれど、そこで梓とその兄の彬との近親相姦の関係を知ってしまう、という話し。
説明すると荒唐無稽な印象ですが、『ファウスト』みたいだなぁと思いつつ、先が読めない話しでした。

犬になった房恵=フサの視線で終始語られるのですが、フサは頭の中身は人間のままではあるものの、元々犬化願望があったので房恵が犬であることに違和感は無く、分別のある犬の視点で読むような、なんとも不思議な感覚。
不思議といえば、フサが梓に抱く感情も犬ならば確かに飼い主にこういう感情を抱くのかもしれない、というような、人間同士ではありえない愛情のような友情のような信頼関係があり今まで読んだことのない印象。

私は犬好きなので、梓や房恵が考える犬と人間の関係に大いに納得する部分があるのですが、犬好きじゃない人はこの小説読んでどう思うのかなぁと気になりました。

重くどろどろしそうな内容ですが、意外とすっきり読みやすいのは、フサと朱尾のやり取りがどこかユーモラスであることと、やはりフサが人間ではないという点につきるのではないでしょうか。彬を追い返したいばかりにゲロを吐くとか。
梓の母や兄のキャラクターは強烈で、強烈なだけではなく確かにいそうだ、というところがまた不愉快。
ラストは思いがけないハッピーエンドで、犬の献身的愛情に感心するばかりです。


2008年07月10日(木) 『嵐のあと』『からくりサーカス 10〜20』(漫)

【日高ショーコ 花音コミックス】

ノンケの男に惚れちゃったという部分を珍しく真っ向から扱ってて好感。
たいてい、すぐその壁越えちゃうからなぁ。
でもさほど重くもどろどろすることもなく、あっさり目。
洗練された絵柄のおかげもあると思うけど。
冷静そうな榊が意外とヘタレ気味なのもよい感じ。
日高ショーコさんの漫画は、普通のところにやや変化球を入れてくるのが多いのか。
榊のほうが実は年下なのも意外な感じがした。
あと会社の女子社員もちょっとの出番だけれど、よいキャラという印象でした。

++++++++
【藤田和日郎 小学館サンデーコミックス】

最初どうして30巻もあるのかなぁと思いながら読み始めていたのですが、勝パートと鳴海パートが交互にあるからある程度の長さが必要なんだなぁと。

サーカス編のほうは徐々に仲間が増え、サーカス団らしくなりつつ平穏に進んでいる一方、からくり偏では一層熾烈なことになっていて涙涙です。
特に鳴海が仮面を取ることになるくだりは、3巻目以来の山場の一つかと。
サーカス編とからくり編が一瞬だけ交わるところなど、なかなかじりじりさせます。
早く再会させてあげて!と。

事の始まりが明らかにされ、ついに夜のサーカスに乗り込んだけれど、本当によくこんな過酷な展開を次から次へと・・・。

久しぶりに合流してきたアシハナ、最初からそうだったんだけど、なんでこんなに死亡フラグが立ちまくりなんだろう・・・好きなので長生きして、なるべく活躍して欲しい。


2008年07月08日(火) 『知らない顔』(漫)

【日高ショーコ リブレ出版ビーボーイコミックス】

表題のツンデレ×ツンデレカップルよりも、他の二編のほうが好きだった。
ツンデレは一概に嫌いではないのですが、基本的にあまり好きじゃないかも。
でも逆にどツボに入るツンデレもいるので、難しいところなんですが。
が、基本的にはじれったい。
表題の二人も、ややとび蹴りしたい感がありました。

「初恋のひと」は珍しいブス専です。
高校時代に不細工だった初恋の相手が、再会したらかっこよくなっててがっかりするという、普通とは逆のシチュエーションが面白かったです。

「運命のひと」はSの歯科医という、怖いだろそれ!という話し。
なかなかよいSでした(肯定かい)
オヤジ受だし。
もう少しこの二人の話し読みたかったです。希望。
杉田さんがぼうっとしててかわいい。


2008年07月07日(月) 『からくりサーカス 1〜9』(漫)

【藤田和日郎 小学館サンデーコミックス】

1から3巻目までの盛り上がりが異常。
通常の漫画の10巻分に当たるであろう内容をよくも3巻で。
常日頃、世の漫画はやや冗長すぎる、と思っていたのだけれどこれは凄いなぁ。あの3巻の終わり方といい。

初っ端から主要なキャラの喪失という現実を、勝やしろがねと共有することで、4巻からのサーカス編がほのぼの楽しいだけじゃなくなっているところも上手い。

こんなに直球で熱いのに、いったいどこで構成を練っているのかいつも不思議。
楽しいばかりじゃなく、グロテスクさや冷酷さや残酷さの描写も半端が無い。
あふれんばかりの正義感とこの残酷描写が同一人物の中から出てくることが信じられない。

女子どもであろうと容赦ないけれど、藤田漫画を読むと、神様は乗り越えられない試練は与えない、という使い古された言葉を思い出す。
期待する以上の方法で乗り越えてくれるから、痛ましくても先を読めるのかもしれない。


2008年07月06日(日) 『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国』(映)『饒舌な試着室』(漫)

【監督:スティーブン・スピルバーグ アメリカ】

20年ぶりに帰ってきたジョーンズ先生。説明は不要でしょう(いつもしてないけど)
いくらなんでも、ハリソン・フォードお年過ぎるでしょう、と思ったのだけれど、映画を観てみたらいやいや全然です。
確かにお腹はちょっと出ちゃってますけど、逆に若い頃のジョーンズ先生より味が出てて好きでした。
マット役のシャイア・ラブーフは『トランスフォーマー』の時に、なんだか良い感じの役者だなぁと思ってたのですが、今回も良かったです。
でもお父さんの弾けぶりの前にはややかすむ。これはもう仕方ない。貫禄の差ですな。

アクションに次ぐアクションの活劇映画なのも変わらず。
ジャングルの中のカーチェイスシーンは見事。
後半の未知との遭遇には唖然。
唖然としながらも、インディ・ジョーンズならそれもありか、と思わせるその力技は凄いとしか言いようがない。
あのまま宇宙に飛び立って、ダース・ベイダーと戦い始めてもきっと違和感がない(いやハリソンは確かに出てましたけども、そういう意味ではなく)。
ジョーンズ先生の無法ぶりは年齢ごときでは衰えていませんでした。

ストーリーというようなストーリーがあって、二転三転するわけでもないのに、飽きさせない映像。
よい意味でのハリウッド映画を久しぶりに観ました。

敵であるスパルコ役のケイト・ブランシェットが、なんだかすごく可愛かった。
予告だとドSな雰囲気満々だったのだけれど、そういうわけでもなく、冷徹な軍人なはずなのに、インディと頭つき合わせて謎解きしてるところがなんだか似たもの同士なんじゃない?という感じがしてよかったなー。
正直、ヒロインよりも可愛かったな。
失われたアークの時から、マリオンはさほど好きなヒロインではなかったというのも理由なのですけれど。
それだけにラスト死んじゃうのは寂しい。
ハリウッド映画の残念なところの一つは、どうしても最後は敵対する組織のボスが死ぬってことなんだよなぁ。
もちろん、魔宮の伝説のラスト、ワニに食われてっていうのはいいと思う。

それにしても、全体的に高齢なアクション映画でした。
ラストの結婚式も凄い高齢っぷり。
ジョーンズ先生はまだまだ世代交代する気はないようです。ちょっとほっとしてしまいました。

+++++++
【鳥人ヒロミ ビブロスビーボーイコミックス】

ぼんくら大学生×腕のいいテーラー(38)です。
です、って説明もないんだけど。
そうそう、スーツ着こなすには中身大事だよね!という話しでした。

陸はおバカだけど素直でなかなかよい年下攻でした。
社会人になってからどうなるか見たかったです。
柊も一見上品なのに中身ロクデナシでよろしいです。

面倒見のよい吉野夫妻が素敵です。
陸のパパも普通でよいなぁと思ったので、もう少し柊と絡んで(変な意味ではなく)もらって、陸がやきもきしたらよかったのに。


2008年07月04日(金) 『図書館戦争』(小)

【有川浩 メディアワークス】

本書が実際の図書館にある宣言を題材にした小説であることは有名すぎるほど有名なので特に説明もしませんが、自由に関する宣言以外の部分、中小レポートだの日野図書館(日野の悪夢はさすがに創作)、図書館法、オウム事件の時の個人情報流出などなど、いろいろと図書館に関する情報が盛りだくさん。
司書のお勉強をしている人は読むと気軽に頭に入ってくるかも。
また、本書に登場する悪法メディア良化法も、元は現実にあったメディア規制三法(立法はされてないですが)なのかな、と。

この小説を楽しむ人には二通りあるように思います。
一つは、図書館ってそういうこともあるのね、ところで郁と堂上っていったいどうなるの、という人。
もう一つは、本当にこんな社会になったら図書館はどういうことになるのだろう、と思う人。
私は後者なので感想も、主にそちらを主体にしていきたいと思います。
郁と堂上は、まあ、興味なくもないが放っておいてもくっつくだろうし。

検閲がまかり通る社会って、国家の衰退だよなぁとしみじみ思う内容でした。
それにしても、メディア良化法が成立したからといって、図書館に対する武力行使に超法規的処置が適応される社会っていくらなんでもありえない、と思いたい。思いたいんですけど、どうですか、ないって言って欲しいな。
まあでもそこは小説なので、そういうことがあると認めるとしても、ライブラリアンの端くれとしてはどうしても、それに対応するために図書館が武力を備えるというのが嫌です。
どうしても嫌です。
有川浩は他の著作を見ても、明らかにミリタリー好きなのが伺えるので、どうしても軍隊を作りたかったのだろうけれど、図書館の戦い方ではないなぁと正直思ってしまう。

まあ、そのミスマッチさが受けた理由の一つではあると思いますので、これはあくまで個人的な印象ですが。

にしても、この世界の図書館の利用率って高いんだか低いんだか読んでてもわからないな。
私だったらこんな物騒な公共施設利用しないけど。
いつ銃撃戦が始まるかわからないような図書館嫌過ぎる…。

最終章の戦闘シーンではいまだかつてこんなに憤る戦闘はなかったかもしれない。
内容が悪いという意味ではなく、本が狩られるというのはたとえ架空であろうとも許せないのだな。
そんななので、猪突猛進型のヒロインの行動にもいつもならもうちょっと考えなさいよと言うところなのですが、私もきっと郁と同じタイプなので言えない。
郁が高校生のときに、検閲に会うシーンとか本当に悲しくなってしまった。

この物語のハッピーエンドは良化法が廃止されて、図書館隊も解散することだと思うのだけれど、そこまではしてくれないだろうなぁ。
やっぱり話しのメインはラブコメなんだろうなぁ。
良化機関の人間もさっぱり具体的に出てこないから無理なのかな。

ところで作中、学校の図書館から撤去された小説の中身が、『キノの旅』っぽいなぁと思ったら、やっぱりそうだったようですね(あとがきより)
キノですら駄目なら、あらゆるライトノベルが書店から消えるな。

そういえば、良化法は漫画への規制はあまりないらしいけれど、たぶん現実にこういう法律ができたら漫画とゲームから最初に規制が入ると思うなぁ。
言ってもしょうがないけど。図書館の話しだから。
こんな社会がどうなってるのか知りたいので、図書館の外の様子も知りたいのだけれど、図書館隊の話しだから今後も見れることはないかもしれない。

とまあ、いろいろと気になることツッコミどころもあるのですが、それなりに楽しいです。


2008年07月01日(火) 『シュミじゃないんだ』(他)

【三浦しをん 新書館】

直木賞作家にして腐女子代表の、三浦しをんのBLエッセイ。
まだこれを書いていたころは、売れっ子でもなんでもない、駆け出し作家だったようですが。
でも、わりと最初から恵まれてた作家だったという記憶がありますけども。

毎回テーマに沿ったBL作家および作品を紹介していく、BL漫画ブックレビューという側面の強い本書。
BLを愛する人ならば、きっと強く拳を握り締めて、「その通り!」と叫ぶこと請け合い。
それとも、私が三浦しをんの趣味嗜好と合致し過ぎているのやもしれませんが。

どの章、どのテーマをとってみても、よく言ってくれた!と思うことしきりで、正直激しく同意しすぎて読み終わる頃には疲労困憊。
特に1章目のリバーシブルについてと、3章目のハッピーエンドについて、6章目の女の子についてあたりは、BLを書く者はみな読め!と言いたいほど。

そうは言うものの、やや見解の異なる部分もあり、8章の耽美とボーイズラブの違いは、作者の美意識の違いじゃないかと思うけど。
そしてサラリーマンが出てきたらやっぱり耽美じゃないと思う。

共感しすぎて言及したい部分がたくさんあるのだけれど、とりあえず小説編も出して書いて欲しいなぁと思いました。

にしても、ここまで共感しておいて、やっぱりしをんの書く小説はどうもツボじゃない。
書き下ろし最初で最後のBL小説も載っているのだけれど、違うんだなぁ。
まあ、それは本人も重々承知しているようなのですが。
読むと書くとじゃ大違いなのですね。

読んでいて、BLにどうして惹かれるのかというと、それはもう一口で言えるものではないのですが、全てのジャンルを内包することができて、なおかつ複雑な人間関係を描けるジャンルだからなのかなぁと思ったりしました。
多くのBLはその自由さを生かせていないのが残念なのですが。



蒼子 |MAILHomePage

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