妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2003年11月29日(土) 『ないもの、あります』(他)

【クラフト・エヴィング商會 筑摩書房】

思うに私があまりこの本を面白く思わなかった理由は、ないものがあったとして、それが欲しいかと言うと、別に欲しくない、と思ったからだと思われます。
あんまりひねりがないのね。
「堪忍袋の緒」とか「転ばぬ先の杖」とか。
こういったものを取り上げて、商品カタログにする、というところまでは面白いんですが、もう一歩欲しい所。

一番よかったのが、「とりあえず」というビールかな。
ってそれは、直接この本に関係ないんですが。

装丁は可愛いです。

で、やっぱりないものはないです。


2003年11月27日(木) 『地下室の手記』(小)

【ドストエフスキー 訳:江川卓 新潮文庫】

これを読んだ後はついつい、「諸君!」と呼びかけたくなりますね。文章で。
まあ、ヘルシングと誤解されそうですが…。

不愉快極まりない人間の手記でした。
思想主張の前に、まずはそれを感じるのが正直なところでしょう。
私は「諸君は〜と思われるかもしれない」と言われるたびに、思ってねぇよ!と律儀に思わずにはいられませんでした。

思想主義的な説明は解説に書いてあるんですが、ロシア文学を初めて読む私にわかる訳が無い。

分らないなりに面白かったですが。

手記という形ながら、不思議と「ぼく」と作家自身を混同するようなことはなかったですね。
文学作品には主人公と作家がダブって見える、ということがままあるんですが。

訳の江川卓は「タク」と読むみたいです。
「スグル」って読みたくなりますよねぇ。

最後に一文抜粋。

ぼくからひとつ無用な質問を提出することにしたい。安っぽい幸福と高められた苦悩と、どちらがいいか?

どちらでもいいが、安っぽい苦悩だけは御免だ。


2003年11月12日(水) 『炎の蜃気楼39 神鳴りの戦場』(小)

【桑原水菜 集英社コバルト文庫】

ああぁぁ・・・・・・・・・・・

この感想を肉声でお伝えできないのがもどかしい。
感想と言うより慟哭に近いような。
もう言葉にして表せない。
だってここ数年恐れてきた言葉がついに出てきたのですよ。
「次で最終巻」
きた、きたよ。
あああああ・・。

もうなにもありません。全ては次で。


2003年11月11日(火) 『李陵・山月記』(小)

この頃ゲームに明け暮れ・・・ているほどでもないんですが。
FF7、MOTHER1+2ときて、さてさてといったところです。
ラインナップが古い。
秋も終わりですけど、むしろ読書の季節はこれからだろ?
外は寒いぜ、と思うのですが。暑くても読むんですけどね。

【中島敦 角川文庫】

きわめてつまらない理由で長年読まなかった中島敦。
高校生の時に『山月記』を読み、面白いなあと思ったのですが、嫌いな国語教師が中島敦が好きだという。
これは今読んでも、素直に楽しめそうもないな、と当時の私は思いまして、記憶も薄れた今、読んだ次第です。

「李陵」
三国志を読み漁ったおかげで、中国史ものはかなりすんなりと読めるようになりました。
中島敦なので、英雄伝、というわけにはいきません。
英雄、偉人になりたくてなれなかった人々。
他の話もです。
私はこの話し、李陵よりも司馬遷の苦悩の方が興味深かったです。

「弟子」
孔子の話だったのか。
孔子というのは引用としてはよく出てくるけれど、人物としてはよく知りません。
井上靖でも読みますか。あれは孔子の話だと思うのけれど違うのか?だって題が『孔子』だから…。
孔子と子路の関係がよいです。いえ、邪まな意味ではなく…こんな断りを入れなければならない自分が悲しい。

「名人伝」
こういう故事の類がとても好きです。
故事も中島敦が書くと、何か別の意味合いを持つような気がします。
解説に書いてあった「狼疾」とやらが表されているように思います。
……あまり深い読みを私に期待しないで下さい。

「山月記」
格調高いと言うのかわかりませんが、この漢文調の一見、硬く読み辛い感じのする文章が、実はとても読みやすい。
けして持って回った言い方をしないから、かもしれません。
私はこれを読むといつも「臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」という一文に心臓をちくりと刺される思いがします。

「悟浄出世」
私は西遊記をちゃんと読んだことがないので、悟浄がどういうキャラなのか実際は分らないのですが、とても面白かった。

「悟浄歎異 −沙門悟浄の手記−」
を読むと、また更に面白い。
このまま中島敦の西遊記を全部読みたい、と思う。ないんですけど。
え、ないですよね・・・?
悟浄の三蔵の観察がとてもよい。

三蔵法師は不思議な方である。実に弱い。驚くほど弱い。〜略〜途で妖怪に襲われれば、すぐに掴まってしまう。弱いというよりも、まるで自己防衛の本能がないのだ。

ああ、まったくその通りだ。
実に真っ当な指摘です。

この後、悟浄がどうやって悟空に学んで行くのか、がとても気になるのですが、ないんですよね・・・。
中島敦、あまりにも亡くなるのが早い。


2003年11月06日(木) 『マトリックス レボリューションズ』(映)

【監督:ウォシャウスキー兄弟 アメリカ】

初日に観に行くなんて、まるでもの凄く待ちに待った人みたいなことをしてしまいました。
驚いたことに、さっぱり混んでない!
あらあらあら・・・。

便宜的に「マトリックス」を1、「リローデット」を2、そして今作を3と呼びます。
上中下でも天地人でもいいですが、とりあえず。

人間と機械(システム)の戦争にどう決着をつけるのか、と思っていたら、共通の第三の敵・スミスを倒すと言う一時的目的により折り合いをつけるという決着。
なあなあですな。
機械としての矜持はないのか。おまえたち。ないか。機械だから。
ラストのあのネオとシステムの会話には嫌になるね。
変に人間臭くなっちゃってさ。
実体が無い、核が無い、それがマトリックスだったのでは。
何の解決にもなってない解決。
それなら1で終わればよかったのに。
マトリックス世界と決別できないってことですか。
どうして突き詰めあう形での解決を避けるかなぁ。
相互理解しろ、とは言わないけれど。もしくは勧善懲悪にしてしまえ。
そんな馴れ合いみたいな休戦協定なんか望んでないぞ!

2と3って、二つ合わせて3時間くらいの映画に出来なかったのかなぁ。
引っ張りすぎちゃったんだよ。
それに、3にさっぱり見せ場が残ってない。
アクションシーンがほとんどなかったです。
で、やっぱりマトリックスのアクションは、銃撃戦が一番かっこいい。あの無駄弾の使いっぷり。
1で一番感動したのはネオとトリニティの銃撃戦でした。
一作に一回、スコーピオンキックというのはノルマなの?

しかし前半はだるかった。
説明的セリフと観念的セリフの多いこと多いこと。2から顕著でしたけれど、私はテンポよい会話が好きなのよ。
また、字幕で読むから余計にだるいのかも。

1だけだったら大して気にしない、というかまあいいかと流せるのだが、三作ともなると言わずにおれない。
センティネルズはどうやって飛んでるんだ?
とても生物的な動きをする所を見ると、きっと精密機械なのだろう。
精密機械というのはえてして脆いものだと思うのだが・・・。
そして、多すぎだろ。あれ、CG的には楽していたんじゃないか、と疑いたくなる。イナゴの大群みたい。
舟もどうやって飛んでるんだか。宇宙でも海底でもないんだぞ、そこは。
APU(ロボみたいなやつね)は、もっと操縦者を守ることを考えた作りをすべきだよ。
ミフネ船長(意外にも大活躍)鱠切りでした・・・。痛々しい。凄いリアルなメイクでした。
あれなら、私は斑鳩君(『D−LIVE!』)が運転する重機の方が破壊力があり、なおかつ防御力もあるんじゃなかろうか、と思わずにはいられません。
重機はロボットみたいなものだと思うな。工事現場見ててよく思う。

斑鳩君並の運転を見せてくれたナイオビ。
一番、救世主っぽかった。かっこいいです。
女性陣、大変がんばりました。
その中で、ヒロイン・トリニティ、短気に磨きがかかって…
1から見ると大層強くはなりましたが、怖いです。もうネオしか見えないな感じが。

一方のネオ。ずっと思っていたけれど、キアヌ・リーブスは目に生気が無い…。
おかげで緊迫しているように見えない。トリニティを愛しているのかも怪しい。
まさか、キアヌ、演技がへ・・・いやいやいや。言うまい。

そんなトリニティ、死す!
て、流れとしては死にそうだったけれど、なんだかなぁ。
私はその後、ネオが自暴自棄になるのかと思いました。
「トリニティのいない世界を守って何になる」みたいなね。
そして、スミスを倒して自分が世界を破壊する、と。
そんな展開を想像したんですが、なかったですね。
ネオはデアデビルになるしね。

さてさて、注目のスミスとネオの対決。
過ぎればギャグになる・・・と。
ドラゴンボールだよ。あの空中戦は。ドラゴンボール実写も確かにできるな、と思いはしましたけれど、する意味はない。
もうコミック的で、それを実写でやる意味はあるのか?と。
アニメでやれよ。そういうのは。
ネオのパンチは「明日のジョー」かと思った。
雨水を切り裂くあたりは『HERO』だったし。先越されてさぞ悔しかったでしょう。だから引っ張りすぎなんだって。
雷を背にするスミスなんてもう、笑うしかない。
あとは巨大化すれば完璧、と思ったんですがしませんでしたね。
スミスがいつ、大魔神になるかドキドキしたんですけど。

おかしかったですけどね。
緊迫感はない。
間違った方向に面白くなってしまった。ああ。
『マトリックス』は本当にかっこよくて感動したんだけどなぁ。
あれで終わったことにしよう。

技術的な驚きはすぐに廃れるけれど、アイディアによる驚きはいつまでも廃れないもの。
それが一作目と、二作目以降の差、だと実感しました。

あー、セラフがいっぱい活躍してて嬉しかったです。
多分、この人が一番好きでした。ああ、このキャラがいただけで、二作目以降に意味があったかな。
しかし、モーフィアスは驚くほど出番なし!!
パンフの表紙からもついに消えました。
いいのか・・・・・。

かさねがさね、私は『マトリックス』は好きだけれど、このシリーズは好きだと言えない。
『マトリックス』の感動よ、永遠に…封印、ではなくて。



蒼子 |MAILHomePage

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