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2011年01月27日(木)
お洗濯









カズちゃんの靴下宙がえり
ユキちゃんのスカートでんぐり返し

トモくんのパンツだけみんなに
はいっていけず
へりに貼りついちゃって

汚れておいきなさい
こんなにまみれてきたのだと
いっそいばって帰りなさいな

おとなたちの撒く洗剤のせい
空ごとぶくぶく泡を立てて

団地じゅうの洗濯機が
いっせいに轟音、回る
回回回っている

















2011年01月13日(木)
ご案内









お答えいたします。その牢が恐ろしいとされるのは
収監されると二度と外へは
出られないという点に於いてであります。
お答えいたします。その牢のもっと恐ろしいとされるのは
二度とは外へ出られぬ牢でありながら
他の囚人達は容易く脱獄を愉しんでいるかのような
錯覚を与える演出が施されている点に於いてであります。

お答えいたします。その牢が殊更もっと恐ろしいとされるのは
そこには自ら選んで入牢したのであると
囚人が徐々に思い込んでしまうという点に於いてであります。
お答えいたします。その牢が
まったくもってなんともそら恐ろしいとされるのは
そこから遂には出たくないのだと
囚人が徐々に思い込んでしまうという点に於いてであります。
尋ねてもいない事であるのに
お答えいたします。お答えいたします。と
先手で差し出されてしまうかのような点に於いてであります。

お答えいたします。その牢のあまり恐ろしくないとされるのは
ちょっとばかし自由時間が多く与えられるという点に於いてであります。
しかしながら
お答えいたしかねます。その牢の存在の有無、ましてや
所在に関してご説明差し上げるという難儀について。
身体と外気との境い目、
想像の旅の終着点、
生涯のうちに手肌に触れていられる時間の容積、
それらすべてのシルエットが
この牢の格子の作る影に重なることは
貴方様にとっての悲劇か、まるで

喜劇風にお答えいたします。その牢が恐ろしいとされるのは
仮に脱け出すことが叶ったとして
自由へと解き放たれたその行き先が
また別の牢の中になっているという点に於いてであります。