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2007年03月26日(月)
天国のような(2)








目が覚めたら おはよう

目が覚めるまでは
まるでどこにいたろうか

もう会えないひとのだれもいない
もうどんな悪口もみつからない
もうからだを真っ赤に掻きむしらず
いられるところ

時計でもコーヒーでもないよ
おはようとだれか言ってくれれば

また一日
この国の住人になろう












2007年03月19日(月)
「普通の人々」









「 鍵の数だけ不幸を抱いているって
  誰かが言ってたね
  僕には部屋のドアの鍵がひとつだけ
  倖せのうちなんだろう
  
  午前零時前の暗い部屋には
  留守番電話の赤いランプが
  No Message 」


                 さだまさし「普通の人々」
                  アルバム「風待ち通りの人々」から





奥さんは毎日散歩ばかり
ぷかぷかそこらにタバコを捨てる
けれども子どもが近くにいれば
赤信号は渡らない

キミはご老人を騙すことで
生活をつないでいってるひと
落ちている財布は迷った末に
ちゃんと交番に届けるんだけど

彼はすぐに暴力を振るって
お父さんもおんなじで
とある教団にはいってから
どちらも優しくなりました

ぼくはつめたい無関心
競馬場で気前がよくて
スーパーのレジのお釣りは
30円の間違いだって許さない














2007年03月12日(月)
洗濯する恐怖









かごをわきっちょにおいて
洗濯機から洗濯ものを取り出すと
ちゃりりんと小銭のはねる良き音が

こういうときなぜ
「らっきー」な気分になるのだろう
ともあれ、いそいそとその収穫に手をのばした

ありり。やけに多いなという疑問と同時に
見つかる答え
服といっしょに洗ってしまったであろう
ぐっしょり濡れたお財布
あいたままふさがらぬわたくしの口

だ。だいじょうぶなのか
銀行のカードはだいじょうぶなのか
紙で出来てる診察券は
クオカードはバスカードは保険証は
図書館のはスーパーのは居酒屋割引券は
生涯一度のキャバクラでもらった思い出のお名刺はぁっ
いや。それよりもなによりも
わたくしの大事なゆきっちゃんはぁっっ

洗剤にまみれた水により
ぴったり仲良くくっついたそれらを
いちまいいちまい慎重にはがし

泣き泣き、ひっくひく
日なたに干してる背中かな











2007年03月05日(月)
神様








90センチのガラスケースに
低めに塩素を抜いた水を張っていく
砂利で陸地をつくり
草を植え温度を保つ
白色と赤色のライトを備える
朝点いて夜消えるタイマー付き

パイプとモーターで水を巡回させる
その過程で汚れを濾す
ポンプで酸素を水に溶かす
生き物をいれる

そこに住まっているさかなたちは
そのちいさないのちでは
ガラスの向こうに広がっているものを
部屋も街も都市も国も
理解するだけの脳がない
教わろうにも手立てがない
背中をまるめて覗き込んでる
私のことでさえ大きすぎて
想像すらできない対象なのでは

なにをかんがえているのかな

水で出来たまるい世界と
薄い大気圏に包まれた水槽のなかで