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2004年05月30日(日)
蟻の巣の上に











蟻の巣の上に水たまりができたら
どうなるんだろう
寝汗が枕に染み込んでいく
染みこむように流れる
隣りの部屋から
昼のニュースが聞こえている



















2004年05月22日(土)
例えばこんなことがうまく伝えられず











目って無意識に
そのひと自身そのひとそのもの
っていうふうに捉えてる

だから目の黒いところとか
血管とか見ると
あーなんか目って肉体の一部分に過ぎないんだよなぁって
ガッカリしたり寂しくなる
けど
あまりひとには分かってもらえない


目でものを見ていて
普段は見てるってことを
そのものがそのままそこにある
っていうふうに捉えてるけど

目ってたぶんカメラみたいなもので
映して認識してるだけって
そんなふうな考えがよぎると
あーなんかホントはモビルスーツの暗いコクピットにいるみたいだなぁって
ガッカリしたり寂しくなる
けど
やっぱりうまく説明できない


















2004年05月16日(日)
夢のさつじん












いつも仲の良くない女の子が
どうしてもさつじんがしたいというので
それに付き合うことになった

そのコはロープを僕はライフルを持って
別々に誰かをさつじんしたあと
0時45分にドトールに集合
サングラスなんてかけたりしてさ
でも結局誰もころしたり出来なくて
そのままマンションに帰ることにした
ライフルを持ってたので
途中警官に職務質問をされたけど
おもちゃだと笑ってごまかした。
警官は一応だから、と言ってライフルを調べたが
「よくできてるもんですよね」の一言で納得してしまった
中に一発分だけ実弾が入ってたんだけど

マンションの窓からは
女の子が向かいの道のマンホールに
コンクリートを流し込んでるのが見えた
すごい楽しそう
満面の笑みでこちらに手を振る
いったいなんにんやっちゃったんだろ
ま、いいかすごく楽しかったんだね
僕も苦笑いで手を振る
でもいくらなんでもマンホールの中にコンクリート詰したくらいで
日本の警察をごまかせるはずなんてないだろ
女の子をマンションに呼んで説教したけど
そんなのよくわかんないよ〜って睨まれてしまった

朝になると母が朝ご飯を作ってくれていた
ほうれんそうのおひたしとお味噌汁と竜田揚げ
マンションはパトカーが取り囲んでいて
もう隣人夫婦に記者がインタビューをはじめていた
あのコンクリートの撤去作業もはじまっている
「警察の方がみえてるんだけど」
母が不安そうな顔をする
「うん」
「はい、どうもすいません私まで朝ごはんお世話になっちゃって」
なにか打ち合わせをしようとするんだけど
何もいい考えが浮かばないし
女の子はなんとかしてよーと
ほっぺをふくらませる

とりあえず刑事さんふたりには部屋にあがってもらって
そのあいだに洗顔をすることにした
なにかいい案が浮かぶかもしれない
母はお茶をいれて「よろしかったら」と朝食をすすめていた
僕は隣人夫婦の好き勝手なコメントを聞きながら
電気かみそりで髭を剃った
でも剃ろうとするそばからそばから
次々に髭は伸びつづけてきてきりがない
カミソリは髭にからみつかれて遂に動かなくなってしまった
窓の外に
男や女の肉塊がコンクリートの深い底から
すくいだされるのが見えた

「昨夜この近くでひとがころされたのは知ってますか?」
「そうなんですか?」
「それが実に浅はかというか、実に興味深い犯人でしてね」
分かってるよん、そんなこと
あんな隠し方だもんなー
さてさてどうしましょうか。まぁ、お味噌汁でもどうぞ。
熟年刑事のほうが「それでは」と僕を睨みつける
「全部いいえ、で答えてくださいね」
いきなりオシログラフかー。まいったなー
できるだけ冷静を保っても
その間別のことを考えることもできなくて
「いいえ」一言一言が全部裏目にでてるような
女の子のほうはもう泣き出してるし
こりゃだめだ、だめっしょ
ああ。あんなに泣いちゃって
かわいそうに

目が覚めると
刑事も母も女の子もいなくなってて
ああ、夢ってこんなんだよな、とか
刑期が終わって出るとしたら40か、50代か、とか
それから
ほうれんそうのおひたしとお味噌汁と竜田揚げが
食べたくなった

















2004年05月07日(金)
「夜よ、明けるな」










「だが、君は帰ってこない
 夜道をぼくは帰ってきたのに
 君の窓明かりは消えたままさ
 月はあんなに明るいのに

 ぼくが持ってる一番高価なものを
 君の笑顔と取りかえたい
 日々はぼくの大好きな君の笑顔を
 波の彼方に置き忘れたようなのだ

 だがやがて朝は来る
 君が飛ばなかったことを知り
 夜の列車には乗らなかったことを知り
 ぼくの汽笛はこう繰り返す

 悲しみを石に変えてくれ
 海の底に沈めたいから
 海の底に揺れる美しい藻は
 いいかげんな言葉をまだ知らない

 翼もないのに飛ぶことを覚え
 夜の物干し台にたたずんでいる
 命がけで飛ぶつもりなら
 夜よ、明けるな 君のために」

                 友部正人「夜よ、明けるな」
                  アルバム「奇跡の果実」から










とりあえず
この仕事で生活をたて
一日ずつをなんとかこなし
給料のでるまでを
一日ずつ数え
気が付けばひと月
気が付けば半年

とりあえず
もう僕の生活の売上は
少しずつでも
もうこんなにたまりましたよ

けれどそのうち
なにか大きな仕事をどんどんばりばりこなす
そんな大人になろうと
そのうちという言葉におびえながら
5年前も同じことを考えてた