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2005年01月22日(土) |
疲れたときは、「アダージョ」(その2) |
◆ご感想をお聞かせ頂き、まことにありがとうございます。
2週間ほど前に、疲れたときは「アダージョ」と題する文章を物したところ、何人かの読者の方が、お薦めしたCDを聴いて下さり、とても良かったと仰るのをうかがった。
社交辞令ではなく、私にとって、これに勝る喜びは、無い。
◆音楽は、感ずるものであり、「分かる」「分からない」というものではない。
白状してしまうと、私は、Web日記ENPITUの「時事・社会」というジャンルに登録していて、そのことを後悔は決してしていないのだが、書いていて何が「楽しい」かと問われれば、我が国の政治・経済・外交や、社会問題を批判する文章よりも、私がこの世で最も好きな「西洋古典音楽」や「オーケストラ」(これが無くなったら、私は死ぬ)にまつわる話を書いているときの方が何十倍も楽しい。
と、云っても、蘊蓄をひけらかしたい訳ではない。音楽を聴くのに知識は必要がない。
音楽という芸術は、それを聴くことにより、楽しかったり、勇気づけられたり、悲しい気持ちが癒される。それで十分である。
楽譜が読めなければならないとか、作曲家について百科事典で調べたり、ましてや和声学や対位法や楽曲分析を「勉強」する必要は全く無い(プロになろうと言う人は話は別だが)。
勿論、興味が生じて勉強したくなったらそれも一向に構わないが、音楽はまずは感ずるものであり、「分かる」「分からない」という言い方は正しくない。
私が、ここでしばしば西洋古典音楽に言及するのは、数十年にわたってクラシックを聴き続けた結果、これは、宝の山であり、今まで聴いたことが無い人も必ず、好きになる曲があるはずだ、と考えているからである。
世の中には、いまだにクラシック音楽を、学校時代の音楽の授業の延長上にあるもの、つまり、「お勉強」だと見なして、食わず嫌いでいる人があまりに多く、勿体ないな、と思うからである。
他人が何を聴こうが、大きなお世話であることは承知しているが、自分が味わった感動を人と分かち合いたいという欲求も、抑えがたいのである。
音楽を言葉で表現するのは、大変難しい。それだけに、「薦められたCDを聴いたら、とても良かった」と云って頂けたときは、飛び上がるほど、嬉しい。
感想を、Web上、メールで教えて下さった、aozoraさん、ipaさん、ありがとうございました。
◆今週はバーバーという作曲家の「弦楽のためのアダージョ」をお薦めします。
これは、色々な、映画やドラマで使われるので、聴いてみれば、ああ、あれか、と思うかもしれない。
サミュエル・バーバー(1910-1981)はアメリカの作曲家である。カーティス音楽院という学校できちんと勉強した、まともな作曲家だ。交響曲や、バイオリン協奏曲、ピアノソナタも書いているのだが、現在では、この「弦楽のためのアダージョ」だけが、突出して有名で、バーバーと云えば、「弦楽のためのアダージョ」なのである。
この曲を聴くと、何の信心も無い私ですら、自然に敬虔な気持ちになる。最初は一つの旋律だが、やがて、弦楽5部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)がそれぞれ、独自の旋律を奏でて、それが互いに絡み合い(対位法といいます)、非常に複雑で、不思議な、しかし、美しい人の心を揺さぶる厚い響きに発展してゆく。
素人にも、完全に完成された、文句のつけようが無い芸術作品であることが、察せられる。
善良なアメリカ人には失礼ながら、この音楽を書いた人と、現在のホワイトハウスの主が、同じ国の人間であるとは、信じがたいほどである。
ブッシュ大統領の数々の暴挙を見ていると、つい、アメリカ人全体に対する憎悪が沸いて来そうになる。この曲を聴くと、そのような考え方は、誤っていることが、分かる。
◆お薦めCDは。。
この曲を録音したCDは多すぎて困ってしまったが、他にも美しい曲ばかり録れてあるこの一枚をお薦めしたい。
(Amazonは在庫が少なくなっているようですが、楽天市場でも、Yahoo!Shoppingでも、「バーバーのアダージョ〜名演集」で検索したら、売っていました。価格は変わりません。絞り込みたいときは、「アーティスト」に「マリナー」(指揮者です)と入れてみて下さい。)
3曲目の「リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲」は、ユニークで、美しい作品だ。
以前、シチューだったか、カレーだったかのCMで流れていたので、聴けば、ああ、あれか、と思うだろう(因みにあのコマーシャルでリュートを弾いていたのは、つのだたかしと言う人で、ドイツのケルン音楽大学リュート科で勉強したプロのリュート奏者なのだが、弟はジャズ・ドラマーで、かつ、「メリージェーン」を歌っていた、つのだひろ氏だというのだから、面白い兄弟である)。
リュートというのは、中世(バッハなどよりも前)に好んで使われた楽器で、少し乱暴に分類してしまうと、ギターの前身である。
そのリュートの独奏用に書かれた曲をテーマに用いて、レスピーギ(1879〜1936)というイタリアの作曲家が書いた管弦楽曲が「リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲」である。
変な言い方だが「懐かしさ」を感じる音楽で、うっかり聴くと、子供の頃のことなどを思い出して、つい、ホロリときそうになる、しみじみとした名曲である。
◆リンク:
ドイツで、研鑽を積まれた後、ドイツのオーケストラで演奏なさったご経験をお持ちのプロフェッショナルのクラリネット奏者、モモリーネ様が本稿を取り上げ、リンクを貼って下さいました。
過分なお言葉、恐縮の極みですが、同時に、
ご専門の芸術家が駄文をお読みになり、リンクを貼って下さるとは、身に余る光栄であります。
厚く御礼申し上げます。
2004年01月22日(木) 「自衛隊派遣を高く評価 米大統領が一般教書演説」←てめえに「評価」する資格はねえんだよ
2003年01月22日(水) 我慢の大切さと我慢しすぎの怖さ