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2004年09月07日(火) |
「地球温暖化→氷河がとける→海洋水大循環が狂う→欧州の寒冷化」"The day after tomorrow"のベース |
◆昨日の補足。氷河が溶けると、何が困るのか。1つには水不足。
昨日引用した、地球温暖化の記事の中で、「中国科学院の専門家が、チベット高原を中心とするアジア高地にある4万6298の氷河の大部分が、地球温暖化などの気候変動のため2100年までに消滅すると予測した。」と書いたけれども、チベットなど内陸部では、氷河は要するに、淡水の固まりなので、これが溶けて無くなってしまうと、飲み水が無くなるわけです。これは、直接的で、分かりやすい。
◆「熱塩循環の停止」という恐れ
世界の海の水は、超巨大なベルトコンベアーのようになっていて、約2000年かけて、地球を一周する。
低緯度で暖められて、表層を流れてきた海水は暖かく(メキシコ湾流)、これがヨーロッパ大陸の西の大西洋を通るので、多くのヨーロッパの都市は、東京どころか、ロンドンなどは北海道よりも北にあるのにもかかわらず、極寒にならない。
海水の密度(単位体積の質量)は、温度が低く、塩分の濃度が高いほど、高くなる。つまり重くなる。メキシコから北上してきた海水は、冷気と接触し、水温が下がると共に塩分の濃度が増す。つまり、海水の密度が高くなる。このため、グリーンランドの東の海で、表層水は海の深いところへ沈み込む。この運動がベルトコンベアーを動かす原動力になっていて、熱塩循環と呼ぶ。
こうしてできた深層水は大西洋を南に流れ、南極のまわりの海に達し、東へと流れる。それから太平洋を北上し北太平洋で上昇して表層に戻り、そこからインド洋を経て大西洋に流れ、大西洋の表層を北上して北大西洋に戻る。これで1周するわけだが、それには始めに述べたように、2000年もかかる。この壮大なGreat Circulationという図をご覧頂きたい。
ともあれ、このような海洋水の大循環によって、比較的温暖な欧州の気候が保たれていたのである。
ところが、海水に近いところにある、淡水の氷河が海に流れ込むと、これから大西洋で沈み込もうとしている表層水の塩分の濃度を薄めてしまう。すると、海水の密度が高くならず、深海への海水の沈降が起きなくなる。極端な仮定をすると、海洋大循環、世界の海水の流れを止めてしまう。これが、熱塩循環の停止という重大事なのだ。
前述のとおり、欧州の緯度は高いのに、温暖なのは、メキシコ湾流に乗って流れてきた、暖かい海水のおかげである。従って、欧州大陸は、非常に寒冷な場所になってしまう恐れがある。
映画の"The day after tomorrow"は、わずか数日で、世界中が凍ってしまうような極端な描きかたをしているようだが、それは、まあ、映画ということで、実際にはあんなに極端なことが、極めて短時間に起きることはないだろう。
それでも、二酸化炭素の増加→地球温暖化→氷河の溶解→熱塩循環への影響ということは有り得るのである。
環境問題は勿論、地球温暖化だけではないが、 昨年、ロシアのプーチン大統領が「地球の気温が上がれば、毛皮を買わなくて済むのでちょうど良いと述べて、世界の失笑を買ったけれども、そのような認識では、困るのである。
2003年09月07日(日) 煩悶