外国為替証拠金取引
JIROの独断的日記
DiaryINDEXpastwill


2003年10月13日(月) イラク戦争に反対してクビになった日本人外交官がいるらしいが、マスコミは事の真偽を伝えようとしない。

◆記事1: <外務省大使>米国支持反対の公電理由に「事実上解雇」

 今年3月のイラク戦争開戦時に駐レバノン大使を務めていた天木直人氏(56)=8月29日付で退職=は30日、毎日新聞の取材に応じ、開戦直前に日本政府の米国支持方針に反対する公電を外務省に打電したことを理由に「事実上、解雇された」と述べた。外務省は「大使任期満了と省改革を理由にした勧奨退職」と説明しているが、天木氏は8日、今回の経緯などについて外国特派員協会(東京)で講演する予定。

 天木氏によると、開戦(3月20日)前の同14日、「戦争回避のため最後まで外交努力をすべきだ」との川口順子外相あての公電を打電、全在外公館にも電報を転送した。開戦後の同24日にも「敗れた外交を取り戻すのは、戦争を終らせる外交努力」と打電した。

 この直後、外務省の北島信一官房長から「外務省をやめるつもりか」「電報を転送するな」との電話があり、6月ごろ竹内行夫事務次官から「省改革のため勇退してほしい」との私信を受け取った。帰国命令を受け8月21日に帰国、同29日に退職し、再就職のあっせんを断ったという。

 天木氏は「外務省の外交に承服できなかった。戦争には大義がなく、フランスなどと外交努力を続けるべきだった」と述べ、「自分の年齢では2度、大使に任命されるのが慣例で、解雇としか思えない」と語った。(9月30日 毎日新聞)

◆記事2:機密費20億円上納は事実 戦争反対で「解雇」の大使

 米国主導のイラク戦争に反対する意見具申をしたことで、外務省を事実上、解雇されたとしている天木直人前駐レバノン大使(56)が、8日発売の著書「さらば外務省!」(講談社刊)で、外務省の機密費のうち20億円が毎年、内閣官房に上納されていたとされる疑惑は、「厳然たる事実」と指摘していることが分かった。在カナダ大使館での約800万円の公金流用疑惑についても言及している。
 天木氏をめぐっては、民主党の菅直人代表らが、「大使の職務として当然の意見具申」なのに、それを理由に外務省が退職に追い込んだとして問題視しており、天木氏に接触、詳しい事情を聴いている。(10月7日 共同通信)

記事3:<外務省>元レバノン大使の著書に反論

 外務省の高島肇久報道官は8日の記者会見で、天木直人・元レバノン大使が同日出版した外務省批判の著書で、同省幹部による大使館職員の給与流用疑惑などの不祥事を列挙していることについて、指摘を受けた件を改めて調査する考えを示した。外交機密費が毎年、首相官邸に「上納」されていたとの記述には改めて否定した。(毎日新聞)

◆私の所感:杉原千畝氏の昔から、基本的な外務省の体質は変わっていないのだろう

 要するに、日本がイラク戦争支持を表明する事に強く反対していた外交官がいたわけです。彼は、それが証拠として残るために、あえて、公電、外務省の公式の文書という形の電報を使ったわけです。

 そのの公電は川口外相、小泉首相のみならず、世界中の日本大使に送られたわけです。その内容はきわめて論理的、道義的にまともな内容で、「日本は安易にアメリカ支持を表明すべきではない。唯一の被爆国として日本は最後まで平和を訴えるべきである」という趣旨のことが書かれています。

 しかし、外務省としては、首相や外務大臣が「アメリカ支持」といっているのに、その「部下」のひとりが世界中に、イラク戦争反対とわめいていたのでは、外務省が首相や内閣府などから睨まれて、まずい立場になるから、天木さんというその、戦争反対を表明した大使に「黙れ。さもないと、クビにするぞ」と圧力をかけたわけです。

 記事3によれば、外務省はそんなことはしていない。天木さんが勝手に外務省を辞めたいと言ったのだ、と主張しているわけですが、これは、こういうときにお役所というところが使う常套語句ですよね。「当局は、知りません」と。

 しかし、天木さんの所に「外務省を辞める気か?」と電話をかけてきた人物の名前なども具体的に挙がっているので、多分本当の話でしょう。

 日本国憲法が国民に保障する基本的人権の中に「思想・良心の自由」(日本国憲法第19条)というのがあって、どういうことを頭の中で考えてもそれ自体は自由だということが認められているわけです。さらに、21条では「表現の自由」が認められていて、自分の頭の中で考えた事を言語を媒介として外に表明する自由というのが認められているわけです。

 だから、外務省が天木さんに「黙れ」といった時点で、その命令が違憲なのですね。重大な人権侵害です。

 第2時大戦時に多くのユダヤ人を自分ひとりの判断でビザを発給して救って、それが、外務省の命令に反していたといって、帰国後、クビになった外交官、故・杉原千畝(すぎはらちうね)さんは、日本のシンドラーとも呼ばれていますが、シンドラーよりも、もっと立派です。シンドラーはユダヤ人を自分の工場で働かせたり、自分の仕事に使う目論見(もくろみ)があったのですが、杉原千畝さんはただ、良心に従って、ビザにサインしつづけたのですから。

 人として、どう考えても正しい事をしたのに、単なる外務省というお役所の中の規律を乱したというだけで、クビになった、という点では、今回の天木さんも50年以上前の杉原さんも同じですね。

 言い方を返れば、外務省がいつまでたっても、そういう役人根性から脱しきれない、ということです。恥ずかしい事です。

 そして、こういう、倫理的に大事な問題を大きく報道しない、大新聞やテレビ。時の権力ににらまれるのが怖いのでしょうね。こういうときこそ、インターネットが活躍するといいですね。

 とりあえず、天木さんが「さらば、外務省」という本を書いたので、私は読んでみようと考えています。


2002年10月13日(日) ロンドンに帰りたい

JIRO |HomePage

My追加