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JIROの独断的日記
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2002年11月27日(水) 心の病は身体の病である。

今日、地下鉄の駅の売店に並んでいる雑誌を何気なく見ていたら、「うつの科学」という文字が目に飛び込んできた。
Newsweek日本語版の最新号だった。自分は大分軽くなったものの、まだ回復途中のうつ病患者であるから、「うつ」の文字には敏感なのである。ためらうことなく買って、一通り読んだ。私は既にうつ病や精神医学の本をずいぶん読んだので、特に目新しいことはなかったが、うつ病とは何のことだかよく分からない人が、是非こういう記事を読んで欲しいと思った。

 うつ病など、精神科で扱う病に関して偏見が強い理由の一つは、難しい言葉を用いれば、「心身二元論」がギリシャ哲学の昔からはびこっているからである。つまり、身体と心は別のものであり、心は気分のもち方で変えられる。だから、うつ病などにかかるのは心が弱い証拠で、本人の責任なのだ、という考え方である。

 しかし、ここ数十年の研究でうつ病とは気分の問題などではなく脳の問題だということが明らかになった。いや、正しく言えば、気分、気持ち、というもの自体、脳が生み出しているのだ。いうまでも無く、脳は臓器のひとつであり、身体の一部なのであるから、脳の問題であるということは、すなわち身体の問題だという結論が導かれる。

 脳の中には無数の神経細胞がある。神経細胞の中では、情報は微弱な電流になって伝わるが、ある神経細胞と別の神経細胞の接続部分には隙間(シナプス)があり、この隙間では脳内神経伝達物質が電流の代わりに情報伝達を行っている。神経細胞から放出される神経伝達物質の量とそれがシナプスに滞留する量、情報伝達先の神経細胞が受け取る量の微妙なバランスが人間の感情に影響を与えている事がほぼ明らかになっている。

 脳内神経伝達物質は何十種類も有るが、中でも特にうつ病と関係するのがノルアドレナリン(ノルエピネフリンともいう)とセロトニン、ドーパミンである。シナプスに滞留するこれらの脳内神経伝達物質の量が少なくなると抑うつ状態になると考えられている。「気分」の正体はこのようにまことに化学的な要因に関わっていたのだ。

 膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが少なくなると、糖尿病になる。同じような事がたまたま、脳の中で発生しているのである。その意味では、「科学者にとっては、病気という点では、うつ病も糖尿病も同じだ」(ノースウェスタン大学、エバ・レディ教授)。

 正確な情報をこのように順に追っていけば、うつ病が特殊なものでなく、本人が悪いからなった訳ではないということが科学的に説明できる事が誰にでもわかる。

 その手続きを踏まずに、うつ病患者を安易に怠け者呼ばわりする人間は、本当の怠け者である。


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