OH GREAT RABI RABI

自由研究
2002年04月02日(火)







自由研究






変色したあさがおの鉢を抱えて
ユウラシはぼくに会いに来た。

本当の夏はまだ来ていない。
あまりに続く雨が、
ぼくたちの視界を錯覚させた。
プールと。

プールはヨウ素液で満ちる。
浮かぶぼくたちの腹部は
さかなのように膨れ
すみれいろに染まる。

雨も花のいろをしている。
匂いだけが流されていき
川ができる。
ひとりのユウラシがそこでおぼれる。

水かきがあるのだ、
と 彼女は秘密をうちあける。
わたしはくるぶしに寄生した青い花を見せる。
すべては雨のせい。

姉さんが泣くのだもの。
髪の一本一本に生えた水かきをむしるのに
ぼくたちは午前いっぱいをついやした。
雨のせいだ。

とうめいな虫が育っているのだけど
雨の縦線にまぎれてしまった。
たまごはとてもしろい。
泡を吹くように敷石のすきまに溜まっている。

あさがおの肥料だと云って
ぼくはユウラシの鉢にたまごをかむせた。
観察するユウラシをぼくたちはわらう。
まだ雨はやんでないのに。

ユウラシはりすの名前をひじょうに大切にしている。
ユウラシはりすなんて飼っていない。
けれどもユウラシはこぶしのなかを覗いてりすの名前を呼ぶ。
ユウラシはあさがおに名前をつけない。

ユウラシは無声音でどなる。
その瞬間 雨は上昇し
また何事もなかったように落ちてくる。
これも二度めの雨だ。

無数のあさがおが寄せられて
ひとつの花になり
ドミノのように色を変えていく。
雨の折りかえしである。

きみの姉さんに、
と ことづけてユウラシは鉢を置いていく。
そのなかで孵化した虫が
根を巣くっている。たまご。ぼくの埋めた。

号令に耳をすます。
口笛を吹くと
ユウラシがいっせいに耳をたてるから
吹かない。

グレイといういろの
あらゆる変化をぼくたちは目にする。
ぼくたちは呟く。
雨のせい。
雨のせいだ。











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