peel ひどく乾燥した午後だった。 今朝は 何やら 銀色に光るものが さりんさりん と しきりに降っていて それを見ながら ぼくは 体温計で自殺しようとした (この雨のなかに出てゆくほどの勇気はいらない) けれども 水銀があまりに冷たくて 結局 いつもと同じに 2度高く 体温を伝えただけ。 世界中のじてんしゃが溶けて 降っているのかと思った それくらいに 誰もいない、 音のない 午前9時から11時。 つるりとした ぷらすちっくの工作ばさみで 小指を ちょきん と切る。 (この指を 恵まれないこどもたちに 食べさせてあげてください) 階段のうえで 膝を抱えて 見張りを続ける ぼくのはなし (電気のこーどで首をつる 薬を 一粒ずつ飲んでゆく あるいは べらんだから飛び降りる) おなかがすかない。 銀色はいつのまにかやんでいて 白い虹が出ていた。 午後は ひどく乾燥していて ぼくは風化するために 道路に出た 坂のしたに はだしの男の子 (手のなかに隠した 丸い実を かったーないふで むいている) そばかすに覆われた顔と うす茶色の目 皮は長くつながり 地面のうえでひからびてゆく、 その裏側がやけに 白く (もしも人であったなら とてもやわらかく動くのだろうと そう思わせるほど 白い色をしていて) 積もったあたりから 雨の匂いがした。 (轍をたどって 追いつくように云われたのだけど 見失ってしまって) 男の子は 皮をむきつづける 水たまりが必要だったんだと思う。 だから ぼくは道路のすみで おしっこをした そうして出来た ひらたい水たまりを見ながら 僕はかすれた声で さりんさりん と呟く。 夜まで からからに乾いていたので、 ぼくは なかなか眠れなかった。 ようやく うとうとしはじめたころ (さりん さりん) 幻のように 雨音がきこえ、 それは一晩中つづいた。 次の朝、道路は 白く粉を吹いていた。
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