(つみのふかさはしょうちのうえで) 噛み付くようなキスは勢いがつきすぎていて、歯が当たった。 痺れる程の痛みはなかったけれど思わず目を閉じたら、その隙をつくみたいにして絡み付く様に彼の舌が口内に侵入してきた。貪欲そうに、深く食いつくように彼は私の口内を犯そうとする。 どうにか息をしようとしても口では息がうまくできなくて、思考回路が空回りしそうだった。 気づけば腰に添えられていた手のひらは太腿に滑らされていて、彼の意図する事を避けられない事に気づいた。 ふと彼は目を閉じていないだろうということにも気づいて、もう目が開けられないと思った。 恥ずかしい、というかどんな顔をしていいのかがわからない。 ようやく口づけから解放されて、喘ぐ様に息をしようとすると唾液が唇の端から垂れた。それすらも彼は舐めとり、私を呼びながら指先を青い生地に滑らせる。 体を弄る彼の指は軍服を脱がす準備に取りかかっていた。 もう拒絶はできないのは理解できていた。 そもそも拒絶する意思はそんなに強いものでもなかった。 けれどそれを改めて考えた瞬間に、ああこれで全て終わりなのだと実感した。 対等な関係はこれで終わりだと思った。 そもそも対等な関係を築くことができたかなんて実際の所はわからないのだけれどそう思った。 自分の喉から零れた喘ぎ声にそれを痛感した。 彼の事ををけだものだとは思わなかった。 嫌悪感はなかった。 あったのは喪失感だけだった。 悲しみもなかった。 ただ大事なものを失ってしまったのだと感じた。 涙が零れて、ぼろぼろと零れ落ちる涙には彼よりも自分のほうが驚いた。 「……中尉…?」 思わず目を見開くと、零れた涙があなたの頬を濡らして。 あなたはハッとした表情で私を見て。 すぐに眉をしかめて、ああそんなふうに後悔したような、顔をして。 そのくせ、こんなときでもあなたは私を役職で呼ぶのか、と思った。 それはあまりにも離れた気持ちを抱いている事を確認したようで、悲しかった。 「ごめんなさい……大佐…」 そんな顔をしないで。 後悔なんてしないで。 泣いてもわめいても。 ( どうか言葉に出さないだけ、罪を軽くして。 ) ( どうか赦されないなら、その手で裁いて。 ) 「…ッふ、ひ…くっあ…ご、め……さ……た、大佐……ふ…ぅうあっ」 呼吸を忘れたみたいで苦しいと思った。 うまく息ができず、声にもならない。 私はただただ貴方を困らせるだけ。 手をとめた彼の肩にしがみついて、ついさっき彼の手が露にした胸元に涙がぼたぼたと零れ落ちた。 みっともない。あまりにも、みっともないと思った。 けれど彼は優しく私の肩を抱いた。 耳元で声が聞こえたけれど聴き取れない。言葉がただの音の羅列に変わるように聞こえない。 「ごめん、ごめん、ごめん、ごめんね、リザ」 聞こえない。理解できない。 嗚呼貴方の言葉は呪いのようだわ。 -- (とかいうロイアイはだめですか…どうなんですか…
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