nameles. きっと一生お互いの事は理解できないだろうと思う。 けれどだからと言って離れるわけでもないと思う。 離れる時はいつか来るだろうけれど、それは悲しいぐらい自然に訪れるだろうと思う。 そしてその時がくるまでは離れないだろうとも思う。 どうせお互いを理解をしようとも思っていないのだから、それで無理は生じない。 丁度良い距離のなか、存在するのは友情とも愛情とも取れない感情だけだ。 廊下に座り込んで待つのにも飽きて夢現の間を彷徨いはじめると、ようやく教室の戸が開いた。その音に目を開けてそちらをみればやはり出てきたのは伊武だった。それに続くように後ろ戸も開き、他にも数人が次々と教室から出てくる。 ようやく終ったのかと内心つぶやきながらMDプレーヤーの停止ボタンを押すと、伊武が淡々とした調子で言った。 「何だ、待ってたの」 ――結局これか。 神尾は少しムッとしながら腰を上げ、抱えていた鞄にMDプレーヤーをしまい込んだ。 「待ってちゃ悪ィのかよ」 「別に。別に待たなくてもいいのに、と思っただけ。そんな暇だったの?」 まったく、こいつはこういう物言いしかできないのだろうか。 内心でこいつはそういう物言いしかできないのだと何度言い聞かせても、やはりその言い方は癪に触る。神尾は眉間の皺を誤魔化そうともせずに言い返した。しかしついつい声をはりあげてしまう。 「ああそうだよ、暇だよ。期末前で部活もねぇからな」 「何怒ってんの…? 俺にやつあたり?信じらんないんだけどなにそれ、大体自分で勝手に待ってたくせに逆ギレって…」 「あーもーわめくな、うるせぇよ」 「神尾だってうるさいよ。怒鳴らないでくれない?」 「怒鳴らせてんのはてめぇだろ、ったく…ンで、もう帰れんの?」 「ああ、もうやることないから」 背を向けるように歩き出す伊武の後に神尾も続く。 もうここへの長居は無用だ。伊武の肩を軽く叩きながら、神尾はいつものように軽口を叩きはじめる。 「あ、そ。英検お疲れ様でしたー」 からかうようなその口調に、今度は伊武が眉を顰める番だった。 神尾に叩かれた肩を軽く叩きながらそう言った。 「馬鹿にしてんの?」 「違うって。まぁそういうのやる気があるのが偉いなーって思うけどよ」 「ていうか神尾はやる気があってもどうせ受ける意味ないでしょ」 「どういう意味だよ」 「そういう意味だよ」 「……お前ってそういうとこむかつくよな…」 「別に教えてくれなくてもいいよそんなどうでもいい事」 「だからそういう、」 「神尾は馬鹿正直なとこがむかつく」 「む」 「でも神尾はそこが長所でもあるんだよね」 「褒めてんのか?」 「さぁ?」 よく人には本当に仲が良いのかと疑われるが、仲が良いかどうかなんてのは自分達だってわからないから答えられない。 ならなぜ一緒にいるのかと聞かれても、それだってよくわからない。 この感情を言葉になんてできやしないのだから。 -- よろんへ。 随分前のだから何のだか伝わらないかもしれんが。(笑) よければもらったってくだはい。 (なんか中途半端に見えるけど追記はしないと思う)
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