無彩色、有彩色。 鉄格子。壁。椅子。微かに差し込む光り。 この空間には色が足りない。彩度もない。 しばらく灰色の壁面を眺めていると、現世の色の溢れ様が懐かしくすら感じられた。 現世に居た頃には、目に痛いとすら思ったと言うのに。 否、懐かしいというよりも、彩度の足りない色々が……寂しいのか。 たとえばあの橙色。毒々しくは思わなかったが、最初はとても驚いたのを思い出し、ルキアから微かに笑みが溢れた。 あの、無鉄砲な橙。 自分勝手かと思えば、そうでもなかった、馬鹿。 鮮烈に残る色。 記憶に、それはもう鮮やかに蘇る色。 ちらつく後ろ姿。 脳裏をよぎるその鮮やかな橙。 嗚呼どうせならもう一度その色を、と。 考えた瞬間、その自身の思考回路に驚き、ルキアは自嘲気味に微かに鼻で笑った。 「……馬鹿馬鹿しい、」 ――全く馬鹿馬鹿しい事を、と。 そしてもう一度繰り返すようにそう言おうとしたが、言葉はもう続かなかった。 言葉を紡ごうとしたのだが、声が喉に詰まってしまったように、嗚咽のような音しか出なかった。 その喉から漏れた声をできるだけ殺すように、床につけていた足を椅子の上まで持っていくと、ルキアはその狭い椅子の上という限られたスペースで、胎児のように体を小さく丸めた。 噛み締めた歯は、後に軋んで痛みを訴えた。 必死で掴んだ腕には爪が食い込み、数滴の血液を床へと垂らした。 点々と落ちたその雫は、無彩色の中で一つだけその彩度を見せつけたが、暫くすると濁るように無彩色が溶けこみ、とうとうそれも色を失った。 涙は、零れ落ちても有彩色にはならなかった。 ** お互い必死でかみ殺せば良い。その感情を押さえ込んで噛み砕いて飲み込んで外に出さぬよう耐えて。 ……うーん……? どうなのよコレは……うー…。 …………イチルキ、のはずだったのだが。 ……というか私の中のイメージでは赤はあるんだけどな……鉄格子の枠とか赤のイメージが……話おかしいじゃん猫田よぉ…
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