会えなくなってどれぐらいたった? どれぐらい、君を見ていないのか。 どれぐらい、君の声を聞いていないのか。 君に会え無くなってからどれぐらい経ちましたか? ねぇ。 どこにいるの。 「俺さ……あい、・‥…………ごめん、南、なんでもない、忘れて」 うっかり口が滑りそうになって、慌てて電話を切った。 『会いたい』だなんて言ってやらないって言ったのは何処の誰だったっけ? 耳もとで、聞こえる囁き声。 その声を払うように、千石は頭をふった。ふ、っと時計の文字盤に自分の顔が映っているのが見えた。 「…………は、すっげー惨めな顔してるし…オレ…」 溜め息が、出た。 「…………」 そのままベッドに寝転ぶと、ベッドが軋んだ。 目を閉じて、両手でゆっくりと前髪をかきあげると、目の前に彼の姿がちらついて。 「……ッ…」 会いたい、よ。 会えなくなってどれぐらいたった? どれぐらい、君を見ていないのか。 どれぐらい、君の声を聞いていないのか。 君に会え無くなってからどれぐらい経ちましたか? ねぇ。 どこにいるの。 「あくつ」 千石はそう一言、ゆっくりと声に出した途端、堪え切れずに零した涙を暖かいと思いながら、そのまま目の上に手を置いて、誰かから目を隠すようにして。 泣いた。 もういない、と 事実を未だに受け入れられぬまま。 引き止めなかった自分を憎んで。 会いにいける事のない自分を憎んで。 強がりを言って彼に別れを告げた自分を憎んで。 先を見れずに過去にすがりつく。 -- どうしようもない、どうしようもない。 未来なんて見えない。 -- 亜久津が、いなくなった時の千石の話。 外部受験の時でもテニス留学の話でもなんでもいいのです。 亜久津が死んだ時の話だって構わない。 夢オチでも構わず。
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