「亜久津おはよう、これ食べる?」 出合い頭に千石はもっていた大きめの長方形の箱を亜久津にずいと差し出した。 「…………栗、づくし」 「うん、甘くて美味しいんだって。かぁさんが先方の人にふた箱貰ったんだけど、うち甘党いないからひと箱おすそわけ。俺も一つ食べたけど美味しかったよ。栗。甘くて。」 「………べつに、」 亜久津は箱から目線を反らす。しかし千石は亜久津をじっと見て言う。 「食べて欲しいな。」 「………」 ちらり、と視線を送れば千石はまだ亜久津をじっと見ていて、気恥ずかしいようななんというか、で亜久津はふい、と顔を背けた。 「モンブランじゃないけどこれで我慢して?」 「…………………くどい。」 「でも食べてくれるでしょ?」 ね?、と自信満々で笑う千石の顔をみて、亜久津は呆れた顔をした。 一時限目開始のチャイムとともに、千石は屋上のドアを開けた。 「いやー良い天気!」 「…うっせぇよ馬鹿、騒ぐな」 「あっは☆メンゴ!」 「………………」 びりびりと包装紙を破く千石を亜久津はへたくそ、と言ったが、そのまま箱のなかの小分けにされた一つをとる。 「どーぞおさきにv」 箱を挟んで向かい側に座る千石のやたら上機嫌そうな笑顔が気になりはしたが、亜久津は包装を綺麗にはずし、出てきた小さなシュー生地に包まれた御菓子にすこし驚いた。 「…なんだこりゃ」 「あ、シュー生地の中にね、栗の餡が入ってるの。欠片もいくつもはいってるの。…あーなんていえばいいかなー…つぶあんの、つぶが大きいやつの栗版っていえばいいのかなー…」 「…はー…変な菓子」 「なんか信州だかどっかのお土産なんだって、サ」 「……ん」 変だとは言いつつも、亜久津はその菓子を口に運んだ。一口でいけそうだったが、ひとまずは一口だけ口に含む。 千石は酷く幸せそうな笑顔で亜久津を見ている。 「どう?」 「…………不味くは、ない。」 「……そう、よかった、甘い?」 「まぁまぁ…!」 ふ、と瞬時に千石は亜久津を押し倒すように唇をかさねた。そして唇を離すとペロリと舌舐めずりをして、意地の悪い笑顔を見せた。 「………御馳走様でした。」 「…ッ…………死んで来い!」 -- ありがちネタで痛々しいだけだと云うのだよレオリオくん…(誰だお前)
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