「亜久津ー?」 玄関の扉は開いていたのでてっきり彼がいるものだと思って、千石は亜久津の家へと入った。靴がないのが気になったが、とりあえずそのまま彼の部屋へと向かう。 「亜久津?」 千石は彼の名前を呼びながら扉を開けた。 しかし、部屋の中には誰もおらず、乱れたベッドの上で開け放たれた窓のカーテンがひらひらと舞っている。 「……まったく、…不用心だなァ…」 溜め息を尽きながら、そのベッドに腰掛けて千石は呟いた。そのまま後ろの壁にもたれかかる。ちょうど首元に開け放たれた窓から入る風があたって心地良い。 「…………つうかこのベッド日当たりいいなー…うらやまし…」 そしてぐしゃぐしゃにされた毛布をとり、顔を埋めた。 ―…亜久津の、匂いがする。 体温を感じない毛布からする鼻を掠めるその匂いと、日向の匂いの、千石が堪らなく好きな匂い。 「……早く帰って来い、あくつ。」 この毛布が少しでも暖かければ、と思いながらも千石は眼を閉じた。 そして少しでも早く亜久津が帰ってくるように、と祈るように微かに呟いた。 -- 亜久津は煙草を買いに行ったんだけど出かけ先で喧嘩売られちゃって帰りが遅いの。 ++ つうか昨日すっかり忘れてこっちじゃなくて普通の日記に書いちゃったんだよね。(バカ)
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