短いのはお好き? DiaryINDEX|past|will
ふと目覚めると、俺はベッドに横になっていて、となりにはパンダが寝ていた。その顔を覗き込むようにすると、寝返りを打ってこちらに背を向けた。 なんでまた俺は、パンダなんかと一緒に寝ているんだろう。 ベッドを共にしているということは、このパンダが俺の彼女もしくは奥さんなのだろうか…。 頭のなかでこの雌パンダと愛し合っているサマを思い浮かべてしまい、俺は頭を振ってそのオゾマシイ映像を彼方へと押しやった。 でもよく考えてみると、雌パンダなどという認識がどこでなされたのだろうか。もとよりパンダの雌雄の識別法など知らない。 でも、どうみても雌としか思えない女性的な雰囲気をまとっているからではないだろうか。なんかよくわからないが、そんな気がした。 どうでもいいけれども、これからどう展開するのかが愉しみではある。 と、そんなことを考えながら俺はまた眠ってしまったらしい。目覚めると眼前には信じがたい光景がひろがっていた。 見渡す限りの大海原。 俺はドーナツ型のチューブに乗っかって、クラゲみたいにぷかりぷかりと波間に漂っていた。 そして更に驚くべきことには、ナイスバディの金髪ギャルたちが、周りを囲むようにして同じようにぷかりぷかり漂っているのだった。 これこそ現実だと思った。この到底ありえないシチュエーションだからこそリアルにちがいない、などと思うのだ。 むろん、胆のなかでは嘘っぱちだとわかっているけれども、ぼくも大人なので一刀両断、即座に切り捨てなどという青いまねはしない。わざわざ波風立てて何になるだろう。 それが大人のやり方ってもんだ。 …などと訳のわからないことを誰にいうとでもなく呟きながら、俺はパツキン美女を横にはべらせたまま、王様気分で再びうとうとと、まどろんでしまった。 どのくらい居眠りしてたのか…。 目覚めは悪くなかったけれども、現前する光景にはまったく凹んだ。 事態はまったく変わっていなかった。 彼女はエプロン姿でシンクの前に立ち、何かを刻んでいる。 どうやらこれが現実で、この現実を受け入れるほかないらしい。 俺は諦めて、かいがいしく立ち働く彼女の背に声をかける。 「ねぇ、きょうの晩ご飯なに?」 彼女は、ちょうどお皿に盛り付けていたパスタを無言で掲げてみせた。 了解。俺も手を上げて応える。 そうだった、パンダが喋るはずもない…。
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