短いのはお好き? 
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2004年09月02日(木) ゆらゆらゆるゆる










きみのことを考えながら俺は居眠りしてしまったらしい。



気付いたらなんか奇妙なオブジェが立ち並ぶ薄暗い森のなかに俺は独りいるのだった。



オブジェを縫って俺は歩いてゆく。



夥しい数のオブジェたち。



気付くとオブジェたちはゆらゆらゆるゆると蠢いている。



それらは、たぶん何かをデフォルメしてつくられているであろうことは、わかるのだけれど、それがなんであるのかどうしても思い出せなかった。




わかっているのに思い出せなくて苛つくのだけれど、また一方ではそんなことよりも、このわけのわからない世界からどうしたら抜け出すことが出来るのか、徐徐に心配になってきていた。



どこかに現実へと繋がっている出口がある筈なのだ。




それが何であるのか、見てみないことにはわからないが、とにかくなんらかのサインが必ずあるはずで、誰に教えてもらったわけでもないのに、それだけは妙に確信があり、魂の奥底に幾重にも刷り込まれた太古からの記憶のように、それはごく自然のように思われた。



しかし、ここがどこなのかさえわからないのだから、ここから出さえすれば元の現実に戻れると考えるのは、あまりにも短絡的ではないだろうか。



だって、そもそも現実ってなんなんだ。



知ってるやつがいたらマジに教えてほしい。




そんなことを考えながら、ふと上を見上げて驚いた。どんよりと重く垂れ込めていた雲の天井が、不意に頭上間近まで迫ってきていた。



いつのまにかロケーションが変わり、俺は洞窟のなかを歩いていたのだ。雲の天井は消え、そのかわり雲と同系色のコウモリが洞窟の天井にびっしりと張り付いていた。



啼きもせず微動だにしないコウモリたちは、上を見上げなければ気付くこともなかったかもしれない。それほど洞窟に同化しきっていた。




やがて洞窟は大きくカーブを描いて右に曲がっていき、曲がり切るとすぐに三つに分岐しているところに出た。



ふたつに道が分かれているのならば、間違いなく俺は左側の道を選ぶと思う。癖みたいなものだ。だが、三叉路となるとわけがわからない。というか、今自分の行動パターンなどわかったところでなんにもならないが、どの道を選んでいいのか見当もつかないのだった。




もしかしたら、それから小一時間ほどもあれこれ考えあぐねていたかもしれない。あるいは、3分程度だったかもしれない。完璧にパニクっていた。




とてつもなく怖いことが待っていると第六感が告げているのだ。いくら考えても答えなど出るわけもない。




俺はイチ、ニィと数を数えながら目を瞑ってその場で回転しはじめる。





目がまわって倒れこんだ道が進むべき道だ。




やがてトランス状態のような浮遊感を伴ったいい感じになった途端、いきなり俺は猛烈な勢いで堕ちはじめていた。




三つのうちのどの道なのかわからないけれども、選んだ道の暗がりの向こうは、底なしの穴だったようだ。




ついさっきまで身体などないようなふわふわとした酩酊感を味わっていたのに、この圧倒的な喪失感はいったいなんのだろう。






落下しながら何物かに激突する恐怖よりも、すべてが失われてしまった空っぽな心に気が狂うほど戦慄し、俺は間断なく絶叫しつづける…。






吐き気がするほどのこの恐怖をどうしたら断ち切ることができるだろうか。









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