母のタイムスリップ日記
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2006年11月21日(火) 小春日和の中で


施設内は静かだった。
普通なら昼食が始まる頃の時間なのに テーブルについている人もいなかった。
母も落ち着いていた。

「仕事に追われて食事の準備が遅くなってしまった」と職員が見えた。
排便の確認をすると夜勤者から中等量と報告があったという。

昼食前にトイレに誘導。
「いきんで」に反応して3.4回いきんでいた。
それから しっかり排便。
普通よりも緩いようだった。

それから 母の腹痛が始まった。
便秘薬のせいだろうか?
お腹はキュルっと鳴っている。「痛いの?」と聞くが 首を振る。
それでも 塞ぎこんで目を瞑ってしまう。
お腹が気持ち悪いのだという事だけは感じ取れた。

少し遅れて 皆の食事の場に誘導し食べさせようとしたが 口を開かない。
少し食べては 何時までも口の中に含んでいる。
こういうのは 在宅時からの 典型的な母の腹痛のサインである。

今日は即食卓テーブルを離れる事にした。
職員にも伝えた。
それから 暫くトイレで様子を見るがどうも出ないようだ。
トイレは明るいのに 「暗い」と幾度も言う。
目でも悪いのかと「見える?」と覗き込むも 反応はなし。

トイレから出て「手を洗おうね」と言うが 不機嫌で手を洗おうとしない。
「ばい菌がついているからね。手を洗おうよ」と数回言うと 自力で手を洗い始めた。タオルを渡すと「何するの」と訝しげ。
「手を拭くのよ」と言うと手を後ろに隠す。

「暗い?」と聞いた途端。

「暗いって!明るいに決まっているでしょ」
「ホラ こんなに明るいじゃないの 何を言ってるの!!」
と馬鹿にされていると言わんばかりに怒り出す。
具体的な言葉で それも的確に話すなんて もう滅多にない母なのに。
母の怒りに驚きながらも その言葉に嬉しくもあり 非常に複雑な思いであった。

椅子に座るよう誘導すると 手を振り切って窓の傍に立って手すりに掴まっている。
落ち着くまで待つしかない。

暫くして「立っていると疲れるでしょ。椅子に座ろう」と誘導すると椅子に座った。

今日は 林檎のコンポートを作ったので それを食べさせようとしたら 小さな口しか開けない。
口当たりがよければ食べるだろうと思ったが 一口食べてそれ以上は もう頑として口を開けようとしなかった。

「こりゃ 外で気分転換しかない」と思い セーターを着替えさせようとすると拒否。
頭だけ入ったセーターをやおら脱ぐ。
仕方ないので 膝の上にセーターを置いて 目が慣れるまで待った。
「寒くない?これ 〇ちゃんのセーターだね。着てみない?」でようやく着用できた。

バックを渡して 外出を促すと 出て行く気分になった様子で歩き始めた。
職員には お昼の食事は不要と伝えた。
玄関で靴を履き替えていたら 入所者の家族とばったり。
「お天気もいいし…ちょっと待って」といわれ 待っていると入所者と共に出て見えて 紅葉見物に行く事になった。

行き先は 欲を言えば限がない。
昨年 出かけて骨折した庭園に行く事にした。

母のお腹にはハッカを塗ったので 少しずつ腹痛も治まってきた様子だ。
その代わり お腹が空いて来て機嫌が悪くなってきたようだ。

エレベーターを降りた時 私の手を振り切り歩き出す。
仕方がないので 着かず離れずの距離を保って歩く。

車には 当たり前のように乗り込んだ。
介助を嫌がる事もなかった。

目的地に着いて 先ずは腹ごしらえと思いお店を探した。
お店に入ろうとすると「ここじゃない」と言わんばかりに勢いよく違う方向に歩き始める。
一緒のご家族は 認知症を理解して下さるので辛抱強く待ってくださる。

食堂街をぐるりと回った所で「ここにしよう」とお店に入った。
注文した物がテーブルに運ばれてきて「美味しそうね」と言って口に運んでみるが 口を閉ざす。
それでも ゆっくり待って また運ぶ。
それを数回繰り返して 本格的に食べ始めた。
お腹が満たされてきて 美味しいと判ったのだろう 笑顔が出てきた。
「もう!」と肩を押すとニコニコしている。

ようやくこちらも落ち着いて食事ができる所までこぎついた。
同行しているご家族も同じテーブルで食事。
「〇さん(母)は 美味しい物を食べ始めると ほんとに良い表情になるのよね。食べる事が好きなんだなって判るわ」
向かい側で食べている母のお仲間を見ると確かに 母と比べると笑顔が少ない。

レストランで介助する姿は どうなんだろう?とふと気になった。
案内された席が 厨房から丸見えなだったのだ。
でも レストランの店員さんや厨房の調理人さんは ニコニコと穏やかに見守ってくれていた。
食事のペースも遅いのだが 嫌な顔をせずにいてくれた。
若い人たちなのに…嬉しくなってしまった。

母の笑顔が戻った所で 母のお仲間が急に立ち上がった。
ご家族は「〇ちゃん座ろうよ」と声をかけた。
「きっと おトイレかもよ」と言うとご家族は誘導なさった。
バトンタッチで母も…。

お腹が満たされて 早速庭園に移動。
手入れの行き届いた庭を4人組がテクテク。
途中で お仲間が私の手を離さないので 介護者をチェンジして 母をお仲間のご家族が介助。
お庭の紅葉を見上げたり 小さな橋を渡って鯉を眺めたり…獅子おどしの音を聴きながら歩いた。
茶室で休息。
秋の景色を堪能できた。
昨年もこうしてみる筈だったのに…転倒させてしまったのだわ!

今年は怪我も事故もなく こうやって過ごせてほんとに良かった。
母のお腹の具合は まだ「?」が残るけれど…でも いろんな事を乗り越えて今日の日のあることに感謝である。

と言う訳で キダチアロエの事は また明日だわ。
これで 嘔吐だったら…う〜んだな。
無事に過ぎてくれれば良いのだけれどなぁ〜。

施設に戻った時は もう夕食が始まっていた。
母の笑顔は変わりなく テーブルについても変わる事はなかった。

今日も母は「わからない」と言う言葉を 幾度か言っていた。
母の記憶が相当細切れ状態なのかもしれないと感じた。

先日気になった 曲がった背中だが 今日はちゃんと伸びていた。
お腹を庇っていたのかも知れない…。
腹痛との関連も見ておこうと思う。


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