母のタイムスリップ日記
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とても暖かな日。一雨ごとに春が深まっていくようだ。 母の所に出向いた。 ホールで俯き加減に座っていた。 下の方のせいだろうと思いトイレ誘導。 パットはぐっしょり。でもトイレでちゃんと排泄できた。 「良かったね」と言うとコクリと頷いた。 濡れている事はあまり気持ちの良い事ではないが 水分が摂取出来ているという事だろうから…良しとしなくては行けないのだろうなぁ〜。
今日は 言葉がなかなか通じない。 2日続けて面会していないせいだろうか? 言葉が理解できないと思える時は のんびりと接するしかない。 「慌てずに…」と自分に言い聞かせる。
こういう時はとても浮かない顔をしている。 母自身ももどかしく思っているのだろうと思う。 外に連れ出したいのだが 理解できない様で「行く」と言う言葉が出ない。 「行く」にも頷くし「行かない」にも頷く。 立って外の景色をみせて少し刺激してみた。 「あれ 歩いている。おかちゃ〜ん!」 どうも 最近は「おかちゃん」は 私だけでなくなってきていて…。 「あら 行ってしまったわね」と言うと「あれ」と動き出した車を指す。 暫くすると 鼻水を出しながら目をウルウルさせ始めた。 「意地悪された?」と聞くと首を振る。「怒られた?」と聞くとコックリと頷いた。
ティッシュを渡して鼻をかんでもらう。母は目も拭いた。 タオルを濡らして顔を拭いてあげた。 幾度かこんな事を繰り返しているうちに 会話が少しかみ合うようになってきた。 「出かける?それともここに居る?」と話しかけるとようやく「出かける」と言った。 それから 支度をして外に出た。 外に出ると 言葉の数が増えた。最初は意味不明の言葉が多かった。母の造語なのでいかんとも理解しがたく 私はただただ頷くしかなく「へぇ〜」という相槌を打ち「判るよ いっぱいお喋りしてね」と頼んだ。
横断歩道を渡る時右折車が来たら 止まる様にと私を引っぱる。 母が1人の世界に入り込んでいると車なんて見もしないのに 私が一緒だといつもこんな風だ。 車が停車すると安心したように歩き始める。
バス停まで着いた時丁度バスも来たので乗り込んだ。 さっきまで「おかちゃん」を連発していたのに 今度は黙っている。 母は 時々「おかちゃんって言って良いか?」と聴いてくるようになった。 人を非難する言葉は「ノー」というのだが…。 「おかちゃん」と言う言葉を止めた事はない。 施設内でも頻繁に言うので他の人は ウザッタイと思われることもあるだろうなぁ〜。大きな声では言わないが 絶えず口にしているから…。
バスが終点に着いた時 皆が立ち上がっても母はどっしり座っていた。 母と目があって「下りるよ」と言うとコックリして立ち上がろうとした。
「さてと お寿司でも食べる?それともケーキにする?」と聞くと「お寿司」と言う。「お腹いっぱいじゃないの?」と聞くとコックリ頷いた。 「じゃ 行こう」と近くの回転すし屋へ…。 昼の時間を外しているので 割合空いていた。 丁度一番端っこがふたつ開いていて…端っこに母を座らせた。 回転寿司って 一度来たけれど…1年ぶりかな?母は覚えていないだろう…。
うっかり軍艦巻きを取って母の皿に取ると食べにくそうだった。 母の視線がマグロに行った。 そうだ「トロ」が好きだ。「海老」も…。 海老とトロを頼みお皿が来た。 でも自力で食べようとはしない。箸で半分にして口に運ぶとモグモグと口を動かす。また半分…でもご飯がポロリと落ちた。トロだけ美味しそうに食べご飯を拾い上げ口に運んだ。 海老は 箸でちぎれないのでそのまま口に運ぶと噛み切りにくそうだった。 今度は「中トロ」これもOK。 おやつ感覚での寿司なので そう多く食べさせないようにした。 それでも一本アナゴの両端や鯵は母のお腹におさまった。 お茶もたっぷり飲めた。
お店を出たら 続いて出てきた人から「お母さん?おいくつ?」「お店でずっと見ていたの良いわね。私の娘もこうしてやってくれるかしら?こういうのいいなぁ〜」って声を掛けて来た。 隅っこでひっそり食べていたんだけれど やっぱり目立つわね。。。 「きっと 大丈夫ですよ。連れて来て下さいますよ♪」と返した。 「気をつけて 元気でね」との言葉を頂きさよならした。
施設に帰ろうとしたが「未だ」と母は言う。 「デパート見る?」と言うと首を左右に振るし「コーヒーでも飲む?」と聞いても首を横に振る。 「何か飲みたくないの?」と聞くと「ジュース」と言うのでスーパーに入ってジュースを購入。 外で腰を下ろして飲もうかと思ったが 母の意思が「真っ直ぐ…」という事で 母の意志に任せて歩く事にした。 今日は 意思を貫く日だ。 来た事のある場所とわかってはいるようだが…何が何処に有るかなんてわからない筈だけれど 真っ直ぐだったりあっちは駄目だったり…だ。 母の頭の中ではルールがあるのだろうけれど こっちはさっぱり?
高いビルの展望出来る場所に行って座った。 勿論 エレーベーターで移動である。 ジュースを飲んでひとしきり休んでから バスに乗って施設に戻った。 帰路のバスは ステップが有ったが 躊躇せずに乗り込めた。 少し遠回りをして 歌を唄いながら…施設まで歩いた。
外出が母にとって良かったのかは判らない。 けれど 歩けたしステップも上れたし リハビリと言う意味ではとても良かったと思う。筋力も付いてきてふらつきが消えつつある。 自力での立ち上がりは無理。1人での歩行はほんの数歩。 でも ここまで快復出来て良かった。
母の行きたい場所は 我が家かも知れない。 あと少し…ほんとにあと少しなんだ。 誕生日まで どうだろう?
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