母のタイムスリップ日記
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朝日新聞に連載されている若年性アルツハイマーのコラム。 今朝 読んでいてジュワーッとした。 それは、介護に疲れを感じ始めていた頃の介護の転機の箇所である。
…奥様に動いて貰おうと30分以上頑張ってみたが動かなかったそうである。 万策尽きた彼は、半ばやけになって 妻の前で思いっきり笑い声を上げてみたそうだ。 1.2分 いや5分ほどたって こわばっていた妻の表情がじわじわと和らいでいった。身体も柔らかい。そして 自分から歩き出した。 そうだったのかー。 妻が不機嫌になる原因を作っていたのは自分の方だった。妻は、夫の苛立ちを察知し自分の思いを全身で表現していたのだ…。 努力して作る笑顔。それが、暗いトンネルに1本のろうそくをともした。
私にも思い当たる場面がある。 おそらく その辺りから徐々に母への対処が変化してきた頃だと思っている。きっかけは 私自身のあまりの体調の悪さにウンザリとしていて 並行するように母の精神状態も悪くなっていた頃である。 ラジオから 思いっきりの作り笑いの声が聞こえた。 その作り笑いに 引きつられるようにちょっと笑った。 その時に「わざとらしい笑いでも笑いを誘われるんだな」と思った。
それから 母の急場に出会うたびに 思いっきり大きな声で「はっはっはっ」と笑った。すると母も笑う。一時的にせよ 急場の緊張がほぐれる。 「あなたは 良く笑うね」と母の曇り顔が言う。 それを 幾度も繰り返してきているうちに ほんとの笑いに繋がってきた。
これは 母にだけでなかった。 友人と介護の話をしている時も「はっはっ」と笑うと「明るいね」と言われた。そういう事を繰り返して 笑いが身についてきたような気がする。
大変であれば有るほど 大きな声で笑い 自分と相手の緊張をほぐす。。。 これは 介護の場面だけでなくなってきたのである。
新聞のこの記事は 自分の苦境の時期を思い起させ 同じような形で転機を得た人がいた事を知り ジュワッ〜としてしまったのだった。
今日は 洗濯物と本を持って母の所に出かけた。 本は 昨日 偶然に出会った絵本である。 母も知っているその絵本の英語版である。(正確には輸入本で母は 日本語版になじんでいた) 「あおくんときいろちゃん」である。 英語は 少しだけ判るし 読めたりもする母なので 大丈夫だろうと思い買い求めたのだった。
パラパラめくって たいして興味も示さない母だったので 無駄足だったかと思った。無理押しはしないで放置。 職員が側に来た時 再度 絵本を取り出してみると「あら 英語の本ね」と言ってくださった。 「きっと 読めると思います」と言ってから母に「なんて書いて有るかな?」と聞いてみた。 するとちゃんと読み始めた。 「読めるのですね」と職員はびっくりした。 母は 得意がる事はなかったけれど「凄い」の連発に嬉しそうだった。 お世話になるばかりの日々で 自分の出来ないことの多さをボンヤリと感じている所に「すごい」と言う言葉を受けたのだから…。 職員が連携プレー体制をとってくれたから 興味を引き出せたと思う。
母はどれ程判っているか 判らない。 着いた時は貼り絵をしたこいのぼりの目を指して「文部省から この事で言われて これをあちらでどう考えるか…という事で…」と真剣なまなざしで私に説明していたのだ。 「こんにちわ」の声掛けと全く関係のない話の展開だったのである。
「お天気が良いのでお出かけしましょうか?」と言うと「出かけるという事は あちらの方の方に連絡している事で 行かなくとも良いかとも…」とここでもどう受け止めるべきか悩む会話となった。 「遊びに行く?」と単純な聞き方をしてようやく「行く」と言う言葉を引き出した。でも これが母の思いと確信は出来ず こちらが リハビリの意味での散歩に誘導するタイミングを作っただけに過ぎない。。。
こういう事がほんとに多くなっている。
出かける前に職員が「朝から排便がチビチビあります」と言ってくださったので それを頭の隅っこにおいて たっぷり歩く事にした。
今日の母の目に留まるのは 自然の様子より 遊ぶ子供たちだった。 水辺で遊ぶ子供をみて「3人で遊んでいるね」とか「土手に寝転んで気持ち良さそうだね」とかだった。 それでも道端に群れて咲いているスミレを指して「ほらっ」と言うと「あら紫色が綺麗ね」と言っていた。
最初の休憩で「トマト」を食べてもらった。
2キロ強の道のりを歩いてさすがにヘロヘロのようで最後にベンチに腰掛けてアイスを食べる時には自力で座る事は出来なくて 腰を両手で支えてゆっくりと腰を下ろして貰った。
施設に戻り トイレに入ってお腹をマッサージしていきみ誘導を繰り返して なんとか 排便できた。 チビチビではないしっかりとした物を。。。良かった。
夕方 そっと施設を後にした。
家には夫を放りだして来たから…急いで帰宅。 夜は珍しく家族揃っての夕食だった。
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