母のタイムスリップ日記
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2005年01月22日(土) ゆっくりで良いのよ 極楽への道は…


 利用者さんの訪問がお休みなので 午前中から母の所に出向いた。
トイレ誘導時「おしっこでた?」と聞くと「出たよ ここから…おしっこが…」と両目を指した。
母とのやりとりは こんな風な事が多い。

それでも 今日母と一緒の時は排尿の失敗はゼロ。
母の自発性は一度。
それも トイレで排尿を済ませた後立ち上がってもらった時に「あ 未だだ」と言ったので慌てて座って貰って再度排尿。
他3回は何れも誘導で成功している。
ただ 施設でトイレ誘導しパンツを下げた時「また 濡れている?」と聞いてきた。「大丈夫よ」と言うとホッとした顔をした。
自分では排泄のタイミングをつかめないけれど…失敗は嫌なのだろう。。。
神経質になっても良くないけれど…気使いだけは必要みたいだ。

施設を出てアチコチ歩いた。
電車にも乗った。
ホームに要る時 電車が入ってくると「長いねぇ〜」と言った。
そういえば 電車に乗るのは久しぶりなんだなと思った。
この所 車での移動が多くなっていた。

母は電車の長さを一両ずつ数えて「長い」「短い」と言う時期があった。
散歩の時 鉄橋を渡る電車の車両を数えているのだった。
「あの電車はふるさとまで行くの?」とも聞いてきた。
「いや ターミナル駅で乗り換えないとね」と言ってみても判ったり判らなかったりが数年前。。。
「今 そんな事を考える時が有るのかな?」と思う。

電車で移動しても 故郷への道を考えるような言葉は全くでなかった。
エレベーターを使わずに 階段を上り下りしてみた。
1.2階使っただけで 太ももが痛いと訴えるので無理はしなかった。

空を見上げたり 木々を見つめると「あ〜」と言う。
「そうね 綺麗な青空ね」「大きな木ね」と言うとコックリと頷く。
出来る限り母の思いに沿うように言葉にしてあげないと言葉すら忘れてしまいそうで…。

来た道をまた電車で戻って 家に向かった。
言葉はないけれど当たり前のように門を開けてドアノブに手をかける。
判っているんだなと思う。

今日はお風呂に入れる。
湯船にお湯を貯めて浴室暖房を入れる。
温まったのを見計らって浴室に入る。
「お腹が痛い」と言っていたので 入浴を渋った。
それでも着ている物を順番に脱がせると逆らう事はなかった。
洗髪を済ませ身体を洗ってお湯で流す時が一番気を使う。
身体が冷えてきているので適温でも熱く感じてしまうので有る。
「ちょっと熱いけれどごめんね」と繰り返し声をかけていると…。
「『ごめん』って言わないで頂戴涙が出てしまうから…」と言われた。
それでも そう言って置かないと「熱い!」と大騒ぎになってしまうだものね。「熱いかも。水入れるからね」と声をかけながらお湯に慣れてもらって無事湯船に浸かってもらった。

と突然
「私 遅いから…」と母が言った。
何のことかいな?と思いながら「何が?」と聞くと…。
「極楽に行くのが遅くて…のろのろしているんだ…」
「?」と母の言葉を確かめるように「誰が?」と聞くと「私が」と言う。
耳を疑い何かの勘違いだろうと思い「何が遅いの?」と聞くと…
「極楽に行くのが…」と言うのだ。
母の表情を盗み見るが特に悲しそうな表情はない。

「極楽への道は あまり急がないでよ。大事な人なんだから…」と言うと
母の目にじわり涙が滲んでいた。

「母は長生きしすぎている…」と感じているのだろうか?
あまりにも透明な母の言葉にこちらが切なくなってしまった。

それにしても 母は いつもそんな事を考えているのだろうか?
死に関する言葉が ほんとに多くなっている。
昨年も「このままお棺に…」と言ってこちらがひやりとしたのだもの…。

お棺にしても極楽にしても 母はあまり口にしないたちである。
だからこそ ただならぬ気配を感じてしまうので有る。
まして 言葉すら曖昧で自分でも表現できなくて 考えて考えて言葉を発したり 言えなくて諦めたり…の日々なのだ。
勿論 駆け引きなど有る筈もなくて…。
ポツリと出る言葉が 本音でも有るように感じたりになってしまうと…ほんとに切ない。
「どうか これ以上言葉を忘れさせないで下さい…」と祈ってしまうのである。

施設に送り届けた時 窓から外を眺めていた母が「○○ちゃん(従妹の名前だ)見てご覧」と私を呼んだ。知らない人が車に乗り込むところだった。
具体的名前で私を呼ぶのは久しぶりだった。
いつも「おかちゃん」が代用言葉になっているのだ。
たとえ従妹の名前であっても 少し前の母に戻っているなら それで十分だ。いや「おかちゃん」と呼んだとしても不満はないけれど…。

それにしてもね。。。お母さん♪
お母さんの行く先は極楽って決まっているのかいなぁ〜。
クリスチャンなんだから 行き先は約束の地の天国だからなぁ〜。
母の頭は極楽=天国って認識されているのかな?


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