母のタイムスリップ日記
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母は、割りに落ち着いていた。 「出かけよう」と言うと「うん」と返事が返ってきた。
着替えをして外に出た。 「今日は、車がゆっくりだねぇ〜」「そうだね。信号で止まっているのよ」 と言ううちに停止していた車が動き出した。 「ほらぁ〜行けぇ〜行けぇ〜行ってらっしゃい?」と母。 「何処に行くのかねぇ〜」と聞いてみると「あっち」と車の進行方向をさした。そりゃそうだわ…。母には負けてしまう。
バスを乗り継いで家に行く。 「家はいいなぁ〜」と言う母。 こんな言葉を聞くのは久々である。 でも、何処まで判っているかは不明である。 家らしい雰囲気が有ると言う意味だったかも知れない。 それでも そんな風に言われるとちょっと嬉しくなってしまう。
直ぐにおやつを食べてもらった。 今日は 暑いのでフルーツの入ったゼリーにしてみた。 「いや」とは言わないけれど食べ方がゆっくりだったのであまり好みで無かったかも知れない。 熱があるかと額に触れてみるけれど特に変化は無かった。 カステラを出すと「美味しい」と食べたのでほっとする。 「お風呂に入ってみない?」と聞くと「今日は疲れているので入りたくない」と言う。 こちらもだるいので 今日は無理しない事にした。 母の隣でちょっと横になったらす〜っと眠ってしまった。 「おかちゃん」と言う声にハッとすると15分ほど過ぎていた。
母のパンツの鍵ホックの糸がほつれていたのを思い出して針箱を出した。 今日の母はあまり興味を示さないので私が繕った。 母の記憶にもほつれが記憶されていたようで「ここがねぇ〜」と言っていた。繕い終えて母に渡すとパンツに記された名前を幾度も読んで何かを確かめるようだった。 母は、何かを思い出そうとしているのだけれど何も思い出せないようで…。 「なあに?」と聞いても「何だか判らないのよ」を繰り返していた。 特に落ち込む様子も無いので こちらからは特に聞き返す事もしないで置いた。
母はぼんやりとしていた。 私も作業を考えるという事も無くて 新聞を読んだり 歌ったりしながら家での時間を過ごした。
哀しそうな表情も無かったので こんな日もいいかなぁ〜と思った。 帰る前にコップにジュースを空けて渡すと「お酒入ってない?」と言う。 「あれ、お酒好きだっけ?」と聞くと「好きじゃないし…飲みたくないよ」と言う。「へへ、判ってるよ。○○チャンの好きなもの。嫌いな物は判るよ」と言うと「ありがと」とお礼を言われた。
今日は早めに施設に帰った。
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