母のタイムスリップ日記
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施設内の別のフロアにIさんという方がいらっしゃる。 Iさんは、最近 転倒なさったようで現在車椅子で生活なされている。
母を訪ねるとIさんが、母のフロアにいらしていた。 「人が訪ねて来る予定があるから、誰かテーブル外してください」としきりに訴えていた。 入所者の方が、それでは困るだろうとテーブルを外してあげようとしていたが 外せないでいた。 きっと、立ち上がって また 怪我をされても困るのでテーブルつきにしているのだろうと察した。表現は悪いけれど、これも ある意味の抑制である。
職員は、どうやら会議中みたい。 お手伝いの方が一人いらしたが、あれこれ 仕事なさっている。
私は、Iさんの家族ではないし、詳しい事情も知らない。 よく解釈すれば、家族が「怪我を避けて欲しい」という要請があったのだろうと思う。 でも、人手が足らないから車椅子という事もあるだろう。 これは、きっと違法ではないのだろう。 でも「安全の為に」と言う理由での消極的介護はどうなのだろう。
母の急変時の時に、母の部屋に布団が敷いたままになっている事があった。 「何かで急に立って倒れたら困る。目が離せない。」と言われた。 私は、出来る限り普通の生活をさせてくださいとお願いした。 駄目とは言われなかったが「とても面倒」という事が伝わってきていて依頼したことが悪いような…そんな気まずい雰囲気があった。
Iさんは、何もする事がなく「来客予定」の事しか考えられなくなっているのが判った。 心が少しでも安定できれば…と思い母の部屋から折り紙を数枚持ってきてIさんに渡して「かざくるま」を折っていただけますか?と依頼してみた。 始めは、折り紙を折っていても気もそぞろだった。 お手伝いの方も「この人、折り紙あまり得意でないから…」と言われた。 それでも「上手ですね」「やはり評判通りです」「頼んでよかった」「ごめんなさい。無理なお願いをしてしまって…」と話しかけているうち数個のかざくるまを仕上げられた。 「折り紙より、ピアノの方がお得意でしょうか…?」と聞いてみると「うふふ」と微笑みお手伝いの方が準備したキーボードを弾き始めた。 一緒に歌ったりして…。母の部屋から指人形を持ってきてテーブルに置いてあげると「まあ、可愛い」ととても興味を示された。 こんなやり取りを小一時間も続けているうちに…。 「今日は、ここに泊めて貰おうかしら…」と言うようになった。 「そうですね。其れがよいでしょう。これから、お家に帰られて夕食の準備も大変でしょうし…」と言うと「そうですね。そうしましょう」と落ち着かれてきた。
私は、これを機に母を散歩に連れ出すことにした。 母は、この間 ずっと本を読んでいた。 いや、読むというより文字に目をやっていたと言うのが正しいかもしれない。 静かだったので時々母と視線を合わせながら様子を見ていたのであった。
二人で歩き出すと「気持ちいいねえ」と母はご機嫌である。 公園でおやつ休息をしてまた歩き出す。いつもの倍以上歩けた。 今日は気温も上がらずお散歩には丁度よいお天気である。 母の日にと買ったサンダルも、履き心地もよいらしく「足が痛い」の訴えもない。 戻り道を歩き出した時、私達に笑顔で近寄っていらした方が…。 でも、私は知らない。後ろを振り向いたが後ろに人影はない。 「こんな所までもお散歩にいらっしゃるのですか?」と言われた。「??」 「私、以前 デイでお母様をお迎えに行ったことがあります。もう止めたのですが…」 納得がいった。 母がGHに入所した事は知らないのだった。 「変わらずに足が丈夫で何よりですね」と言われた。 母にもあれこれと話しかけてくれていた。
よく、覚えていて話しかけてくださったなあと思った。
更に遠回りして帰路につく。 人に会ったせいだろうか?母の足は更に軽くなっていた。
施設に戻ると Iさんは、まだ、車椅子で母のフロアにいた。 引継ぎを終えてようやく自分のフロアへと戻っていかれた。
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