猫の死体と目が合った
のが一週間前の雨の日。 わたしは赤い傘で、とぼとぼ歩きながら郵便局に向かっていた。 猫は植え込みの影にひっそりと横たえられて じっと道行く人を眺めていた。 しっとりと毛が湿っていて、 触るとぺたぺたしそうだった。 目は澄んでいたけれど 体は重力に逆らうことを忘れてどっしりと重たそうだったので 命が無いのは一目瞭然だった。 ……猫、もしかして、まだ、いるかな 今日は、目、逸らしてなきゃ とおそるおそる家を出て再び郵便局に向かったのだが 今日は自転車だったため、しかも薄着で結構寒かったため、 猫のいた植え込みに近付く頃には そんなことはすっかり忘れていて、しゃーっと通り抜けてしまった。 そして家に帰ってから猫のことを思い出した。
あの猫はどうなっただろう。 誰かに見つけられて、運んでいかれただろうか。 それとも、まだいるのか。
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