遠くへ行くと何かから逃げ切れたような気持ちになる、
曇天の 風の強い日
細かな雨粒がはたはたと顔に当たって
ずいぶんひさしぶりに息をしたと思う
だれでもなく
あのひとに
すがることはできないのはわかっていて
だけどどこか逃げ場のように思っていて
だから
死んでしまったらいいと
ひどく
痛む目に花粉症と名をつけてみたりする
たぶんなにも
おそれるものはない
ひきとめるものもない
ただあのとき
あのとき
明け方の部屋でどこへも行けなかった自分を恥じていたりする
さよならを 言えなかった自分を責めていたりする
ただ遠くへ向かう
少しずつあのひとが遠くなる
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