人が人を殺す夢を見る。 親族が殺されていく夢。 兄が、殺されるために隣室へ呼び込まれて入っていくのを見、鈍い音が響くのを聞いて、続きを見たくなければ目を覚ませばいいのだとようやく気付く。
死んでぶら下げられた何体かの死体の中に自分がいないのを見て、 あぁあの見も知らぬ顔をした幼い子供が自分なのだと気付く。
しかしその夢の中では、殺害者の云うがままに人を呼び入れ鴨居にぶら下げるのを手伝い真っ白な顔をしているのは確かに私なのだ。
白々と明けた朝のカーテン越しの薄明かりに、目を開けろと自分を叱咤して覚醒してから少し、泣いてしまう。
血の色が赤くなかったのをまだ憶えている。
昔から時々、人が死ぬ夢を見る。 そこにはいつも家族の姿がある。 血が絡めば判断が狂い、情が絡めば憎しみが混じる。 それだけに目覚めたあとの後味の悪さは格別だ。
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