あきれるほど遠くに
心なんか言葉にならなくていい。

2002年05月28日(火) 海蛍


下にあるのは、某所での即興投稿に間に合わせようと思ったやつです。
ほんとは「うみほたる」なんだけど。何となく漢字の方がいい。
今日は大学に行こうかな、とも思っていたんですが、1コ詩を仕上げなきゃいけないと
心に思って。



↑真が幸せになります。
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ま、できないかもしれないので、そのへんはご了承。





海蛍




聞こえない
聞こえない
何も




人魚の髪は
決してもつれないのだと
どこかで聞いた
そのとおり
彼女の髪は
指先をすり抜け清かに
海の色をしていた



「この髪に
 ふれたからには 




満月の夜
何度も
海へ漕ぎ出した
彼女はいつも
小さく歌って僕を待ち
月は見下ろした
鏡のような水面を這う一艘のボート





海の果てを知っているかと僕は問い
微笑みながら彼女は応える



「ここもまた
 海の果て


 この世の果て





沖へ流れる一艘のボート
招く人魚の白い腕
はるか遠く
空は海に
海は空に溶けているように見えて



月が翳れば
世界は闇に溶けた
彼女の髪に静かに
光が灯り 灯っては消え
口付けるたび
仄かに彼女を照らした






「遠くへ
 ゆくの

 あなたも


来たいかと彼女は尋ね
指を絡め
僕は独り 浜辺へと返す
彼女は海の果てへ
いつも
僕はここに
ここにいるから
満月の夜には 海へ漕ぎ出すから




彼女の髪には
蛍が住む
月が翳れば仄かに光る


低く 彼女が歌えば
波は消えてボートを導いた
満月の夜
今なお 月が翳れば
滑るボートの周りに

淡く光る 蛍の群







そして今もまだ

聞こえない
聞こえない
彼女の歌





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周防 真 [MAIL] [HOMEPAGE]

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