ゆれるゆれる
てんのー



 馬鹿です。馬鹿がいろんなことを言います。

「外に出ると内がよく見えてくるとはよく言われることだけれど、たしかに、日本という国がやけに特異な国に思えることがあります。」

 これは、ケニア、ソマリアなどまるっきりちがう文化圏に飛び込んだ(そしてそこに適応できる)人だからこそ思うことで、言っていることは明治時代にパリやベルリンへ行った国費留学生が言うのと同じ意味合いだろうと思う。違うのは、明治の人たちは凄まじい劣等感につぶされそうになりながら、先進の文明を学ぼうとしたけれど、今日本人は世界中にあれやこれや教えに行く立場だということ。
 そしてここにこそ、敏感でいないといけない。革命家でもない限り、自分の国を特別劣った国と考えて得する理由は何一つない。
 それに、とにかく日本の外でこれを感じたということが大事で、日本に住んでいながら「俺の国は絶対変な国だ、なぜなら・・・」なんて言うのは完全に、お前が変だよ、なのだ。

 僕がマレーシアに住んで一番驚いたことは、あんなに日本って特異な国、日本人って異常な人種だと思っていたのに、ぜんぜんそうじゃなかったってことだった。学校を出て、就職して、車買って家買ってガキ育てて、老後の積み立てをして、休みに何するか家族で悩んで。何の違いがあるんだ?

 早い話、中学生の悩みだと思う。「私って変かな?」「普通でいたいだけなのに」「みんなの中で浮かないように」、あ、中学生だけじゃないか。学校でも会社でも、病院でも町内会でも。
 別に変でもなんでもないんだよ。なんでそんなに日本を独特な国にしたいのかな。気持ちは分かるけど、それはすぐに一部分を「日本は特別な国」と変えて宣伝に使われかねない発想だ。
 日本はたしかにいろいろ独自のものを持っている。それは、世界中の地域がそれぞれ独自のものを持っているのとまったく、同じ程度に。特異さとしては、この「変な国志向」くらいのものだ。

 それから、みんなが大好きな言葉に「極東の小さな島国」というのがあるが、こんな言葉を流行らした奴には「氏ね」と言いたい。世界地図作っちゃ自国を真ん中に置いておきながら「極東」というひがみ根性も泣かせるが、とりあえず「小さな島国」という表現はレトリックどころか大嘘である。小さいといっても面積、人口、影響力といろいろ考えられるが、面積などこれで小さいと言っていては猛反発を食らうだろう。日本の興味のある国(大好きな国、脅威になる国)がたまたま日本より大きかっただけの話だ。日本よりだいぶ小さい韓国、マレーシア、イギリスの人たちが自分たちを「この小さな国の・・・」なんて言っている話など聞いたこともない。シンガポールくらいじゃないとサマにならない台詞だろう。人口は文句ないだろう、国連に200近い国がある中で堂々7位の、たいした「小ささ」だ。影響力・・・これは「志向」の問題で、「気は小さくて力持ち」の大男はいつでも内弁慶、はやりの言葉ならDVまがいになりかねないものだ。実際、今はウチとソトで世界は「ソト」だから小さがっているが、いつ世界も実は「ウチ」なんだと気づかないとも知れないのだ。またこのごろは日本という「ウチ」で「日本的なるもの」がずいぶん威張っているようだが。

2003年02月22日(土)
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