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■ (日記) 辛いなぁ・・・・・・
昨夜もからくり箱は熱かった。 エポックの頃もからくり箱もそうだけど、色々な人間と店で出会い、気に入られ、その止まり木に集う見知らぬ小鳥達もやがては顔見知りになり、擬似ファミリーが出来上がる。 それを見ながらアタシは嬉しく、愉しく、自分自身も楽しみながら店を営んでいる。 でも、辛い事も多いのだ・・・・・・。
お客達は男も女も若い子も年配者も、アタシにとってみれば子供のような存在だ。 一度来てくれた人が又来てくれたら、いらっしゃいませではなく、お帰りなさいという意識で客を迎えている。 何度も何度も帰ってきてくれると、だんだん情が沸いて来て、本当の家族のような気持ちになる。
客に対し、友情でもない。恋情でもない。愛情とも少し違い、母性的な愛しさが沸いてくるのだ。
しかしアタシは常にそこに居て、常に待つ身だけの存在であり、折角ファミリーになった子供達を、卒業や転勤や結婚や不幸やらで巣立たせなければならない時が必ず来る。 そんな時は本当に寂しく辛く、やるせない気持ちになる・・・・・・。
もう何度も、そんな出会いと別れは繰り返して来た筈なのに、その寂しさだけは未だ一向に慣れないなぁ・・・・・・。 何度涙を流してきた事だろう・・・・・・。
毒舌リーマンのご一行達。 詳細はまだはっきりとは解らぬが、会社の事情でもしかしたら全員バラバラになり、殆どが松本を離れるかもしれないと言う。
去年の11月頃、フラリとドアを開け、(I)と(O)は入ってきた。 しょっぱなから毒舌で揚げ足取りで、全く可愛気のない憎たらしい客だなぁ・・・と思っていたのだが、彼らは再び仲間を連れて帰って来、それ以来頻繁に来るようになり、誰よりも頻度の高い家族の一員になった。 アタシをマスターと呼び、来れば必ずジョークで「一人1500円でやってくれ」と無理難題を言い、アタシをボロクソにこき下ろすふとどき者たちだ。 でも、だんだん愛着が沸いて来て、来るたび毒舌バトルが繰り広がった。
たった8ヶ月ばかりの家族だったけど、世話の焼ける子供の方が可愛いと言うように、あのしょうも無い駄々っ子たちが徐々に愛しくなってきた。 折角こんなに仲良しになったのに巣立たせるのは何とも寂しいものだ・・・。 「ウソに決まってるじゃねぇか、この糞ばばあ」 と言ってくれたら嬉しいのになぁ・・・・・・。
「この店の事は絶対に忘れないよ・・・」 昨日(I)が珍しくも温かみのある優しい声でそう呟いた。 アタシャ不覚にも涙がこぼれてしまったよ・・・・・・。
本当にたまには思い出してよね・・・。からくり箱に集う仲間の事もアタシの事もあの店のハチャメチャなヘンテコリンさも・・・・・・。 そしてアタシが生きている内にいつかヒョッコリと現れて、びっくりさせてくれる事を願ってやまない。
松本に居る間は、せいぜい通ってくれや。 そしてあの店をしっかりと目に焼き付けて置いてくれ・・・・・・。
アタシもアンタ達の事忘れない。
2007年06月23日(土)
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