睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
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僕はもうずいぶん夢を見ていなかった。 なので旅籠の主人にも花にも笙にも会っていなかった。 というよりも、忘れていた。
あの不思議なほとんど雪に閉ざされたあの世界をすっかり忘れてしまうほど 現実に生きていた。 言い換えると現実に自由な心を殺されていた。
現実ではいろいろなことがあり、忙しく過ごしていた母はこの世を去り 旅籠滞在中に見たものがほんとうならあの三差路を母は進んでいったのだろうと突然思い出した。
そうすると急に夢を見る頻度が上がり始めた。 まだ漠然としていて目が覚めると忘れてしまうのだけど 夢を見たことだけがなんだかぼんやり僕の頭の中に残る。
でも夢を見た日はひどく疲れるんだ。
あの日泣いていた花はどうしているだろう、とおもいながらも
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