睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
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予想に反して雪は解けてはいなかった。 花のはなしだと朝方雪が又降ったのだそうだ。 「あの大雨でもだんなは良く寝ていらっしゃいましたよねぇ」といいながらくすくす笑っていた。
それよりもここでは珍しい青空が見えていた。 「露天に行っちゃおうかな・・・」
「それでは、これでありがとうございました」 「いえいえ、晴天は幾日続くかわかりませんから早めに出られるほうが良いでしょう。」
離れから出てくる椿の女性と主の声が聞こえた。 別に見送る気はなかったのだけれどなんとなく玄関先まできていた。 「昨夜はお付き合いありがとうございました」深々とお辞儀をする 「いや・・・別に何もしてないし」なんて答えていいかわからない。 変な沈黙がよぎったとき「三叉路までお送りしては?君も天気の良い日は外に出たほうがいい」主人の意味ありげな笑みに促され外へ出た。 何も話さず三叉路についてしまった。 「では、これで・・本当にありがとうございました。・・・・・・私の罪深さをお知りになりたければ川に降りてみてくださいませ」
そういうと椿の女性は右の道を選び振り返ることなく歩いていった。何を話していいか、なんて言葉をかけていいかもわからないまま僕はしばらく立ち尽くしていた。 「川か・・」昨夜の雨で増水していることだろう。 「どうせ、いたちが通してくれないしね」 そう思いながら川の見えるところまでいって僕は絶句した。
川いっぱいに人が流れているのだ。 必死にもがいて岸に上がるもの。鼬の船頭に救い上げられ船で向こう岸へ行くもの。船頭と話し込んで何かを渡し船に乗るもの。 力なく流れに乗っていくもの。
いつもは雪で覆われた川岸はどこまでも石ばかりになっている。川岸で泣いている子供たち。子供たちは川へ近寄ることもできないらしい。
「これって・・・?」
とても恐ろしいと思った。こんなに晴れているのに川の周りだけがとても暗く見えた。なんとなくしっている。話に聞いたことがある。でもそれはもっと幻想的なもので美しいものだったはず・・これって・・・まさかこれが本当なのか?じゃ、ここはいったどこなんだ?そして僕はだれなんだ?何でこんなものみてるんだ。 いや、ここにいる動物たちは何で話せる?人間のように働いている?なぜ?なんで?そんなこと考えているうちに気が遠くなっていくのをかんじた・・
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