睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
道標|過去へ|それから
2002年09月19日(木) |
そうしてまた雪が・・ |
1週間、花が言うには目が回るほど忙しかったんだそうだ。 たしかに、ひっきりなしに花嫁行列がこの旅籠を何組も出たりはいったりした。
宴会もそれは凄くて、離れの茶室さえも静に過ごせるところではなかった。 この1週間何度もうなされたおかげで僕はすっかり落ち込んでしまった。 何にうなされてるかもわからないのだけれど・・・なんだか凄く辛い夢だったことだけ覚えている。
「今夜は初雪ですよ。」
宿の主人がすれ違うときに教えてくれた。初雪って1週間前まで積もっていたんだから初雪って表現も変だよな?
「はぁ・・・ここがやっぱり落ち着くよなぁ。」 露天で夜空を眺めながら久しぶりにすっきりした気持ちになっていた。 「あ?」夜空の星がゆっくり落ちてきた・・
ふわり、ふわり・・・・・・・
「雪だ・・・」
ふわり・・・・ふわり・・・・
あんなに見飽きた雪がとても綺麗に見える。ゆっくりゆっくり僕のところに落ちてくる。綺麗な星空なのに雪が降ってくるから雪と星の区別がつかない。
ふわり・・・・ふわり・・・・
お湯に溶けて消えていく。空を眺めていると僕は雪と反対に上っていくようだ・・。
「いい加減上がらないと、湯あたりしちまいますよぉ。」
花の声が響く。 「うん、わかってるよ。もうでるから。」 「夕食は旦那さんの部屋へどうぞ。」 「え?わかったぁ」
珍しいなぁ、、、今日は客少ないのか?食事なんかいつとってるかわかんないのに
降り始めた雪は朝にはすっかりあたりを覆っていた。僕の重い心さえも隠してくれるように・・・。
また雪ばかりの日々が始まった・・。
|