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人物紹介


ボーリング
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翌日、私はM子の家からバイトに行き、そのまま自宅に戻りました。
母は何か文句を言っていましたが、父は何も言わなくなりました。
そして、4月に入り、私は高3になりました。
クラス替えは無く、バイトも引き続きやっていて。
何一つ変わらない毎日でした。

バイト先では、当時大学生だったアルバイトの女性や、社員の20代前後の女性から、とても可愛がってもらっていました。
他の売り場のバイトの男の人とも、少しずつ話すようになり、結構楽しんでバイト生活を送っていました。
K先輩のことを思い出す事も、徐々に少なくなっていきました。

4月に入って間もなく。
1年の時から同じクラスのY美に、会って欲しい男友達が居ると言われました。
Y美と中学の時同級生だったM君という人に、修学旅行での写真を見せたところ、私を紹介して欲しいと頼まれたとの事でした。
Y美は、K先輩との事を話していたので、丁度忘れるのにも良い機会だと思ってくれたようでした。

Y美が見せた写真の内一枚は、クラスの集合写真で私は座って写っていました。
その写真は、私が自分で見ても、実物よりかなり写りが良いものでした。
それを見て、M君は私を気に入ったと言ったそうです。
でも、もう一枚のやはりクラスの殆どが写った写真で立っている私を見て、
「この子、背が高いんじゃないのか?」
と心配していたと聞きました。

私はY美から、M君の写真を見せてもらいました。
坊主頭で、目つきが悪く、いかつい感じの人でした。
ただ、彼が気にしていたように、背が高くは無いらしく。
でも、とっても気の良いヤツだよ〜とY美に言われました。
私は、いつも聞いていたY美と元同級生のM君達との関係を、羨ましく思っていました。
幼馴染ということもあり、男女関係無く集まって遊ぶという関係は、私には無いものでした。
その仲間に入れたらいいな・・・
そんな気持ちで、私はM君に会う事をOKしました。

4月の半ばの日曜日。
私はY美の地元までM君に会いに行きました。
実際に会ったM君は、写真と違って怖いと言う印象は無く。
なんだか照れているのか、目を合わせてくれようとしませんでした。
M君の友達と数人で、ボーリングをしに行く事になりました。
そこまでの道中で、前を歩くM君のヒソヒソ話が聞こえました。

「やっぱ、俺より背ぇ高くない?」

かなり、私の身長を気にしているようでした。
正直、私としても、思ったより背が低いM君に会って、少しだけガッカリしてしまったのが本音でした。
でも、あまりにも気にされると、余計になんとなく嫌な気分になっていきました。
M君に対して、気乗りがしなくなった上に、情け無い事に、私はボーリングをするのが初めてで。
物凄く憂鬱になって、出来れば少し話だけして帰りたいと思っていました。
でも、私一人の我儘で、そんなことを言い出せるわけもなく。

ボーリング場ですぐに私は困りました。
投げ方は勿論。どうやってボールを持っていいのかすら、私は知らなかったのです。
前の人が投げるのを一生懸命見て、それを見よう見真似でボールを投げました。
後ろで、

「おいっ、持ち方教えてやれよ」

という声が聞こえました。
もう、その時点で、ますます嫌で嫌で居たたまれなくなりました。
私は、指を居れずに投げていたのです。
投げ終わると他の子に背中を押されたM君が近づいてきて、ボールの持ち方を教えてくれました。
恥ずかしくて、顔を上げることも出来ずにかろうじて「有難う」とだけ言いました。
心の中では、「だって初めてだし。知らなかったし」と口に出せない言い訳がグルグルしていました。
でも、下を向いていては暗いやつと思われてしまう。
それに、皆が私に気を使っているのが分かりすぎて、私は無理に明るい子でいるように意味も無く笑ってみたりと努力しました。

その後、お茶をしに、誰かの家の喫茶店に行ったような気がします。
周りが気を利かせてくれて、M君と私は二人で正面に向かい合って座って。
でも、会話は殆ど覚えていません。
以前やっていた部活の話と、やっぱり身長の話でした。
確か、「身長いくつ?」と聞かれたのだと思います。
M君は、私の身長を聞くと「俺と同じぐらいだな」と言いました。
でも、歩いているときの感じで、きっと私より1-2cm低いかもしれないと思っていました。

「もしかして、御嬢様?箱入り娘なの?」とも聞かれました。
ボーリングをやったことが無いというのが、彼にとってはかなり不思議だったのでしょう。
身長のことも、ボーリングが始めてだということも、私にとっては恥ずかしく、いちいち指摘されたくない話でした。
会話していてもお互いにぎこちなく、しかも身長を本気で気にしているM君を見て、私は次があるなどとは思えませんでした。

翌日、Y美に「Mは、どうだった?」と聞かれました。
どうも何も、あれっきりでもう会わないだろうと勝手に思っていた私は答えようがなく、

「ああ、なんか身長気にされてて困った」

とだけ言って、笑って誤魔化しました。
するとY美が、

「Mは、結構、気に入ったみたいだよ?」

と言いました。

「ま、あいつも結構緊張してたらしいからさ。ちょっと付き合ってみてやってよ」

Y美はそう言いながら、M君の家の電話番号を私に「かけてやって」と差し出しました。


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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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