微かなもの ものおと 気配
それでもつきさせることができるわたしの皮膚
しずかにすぎていかない 時間は轟音を立てて からだを押しつぶすのだけど
いちいち、伝えていられない
うまく、いえない。
しあわせとひとは呼ぶだろうものもの、それにかこまれて 血のいろ、を棄てられないで、ぐるぐると旋回する ものいわない刃物がまぶたのなかでちらちらとひかって あたしは、それにむかって飛んでいくばかものをただ 押さえつける 理由をときどきみうしないながら
ちっぽけな隕石がまっすぐにひかれて燃えあがったらきっとその火はきれいなのに
あたしはどこあたしはここあたしはどこあたしはどこどこどこ
あなたはわからない顔ばかりする だから必死にしゃべる からっぽのようにみえてしかたない泥だまりのなかから言葉を ひろいあげて組み立ててあなたがたに向かって もつれた舌で、放る。
すでに、なかば、 絶望しながら 返答がかえってこなくても しゃべろうと つながれようと つかれはてていくのが「あたしのしごと」なのだって 不可解な顔をしたひとへ言葉を伝える 伝わらないのに すぐさま壊れる橋をかけること ずっとずっと、ずっと
遠い遠い遠い遠い国にすむきみへ。
もう いなくていいようにおもってしまう なにかがまちがえたらいいと思う 悲しみなんて知らないと無責任に言い放ち とびだしてしまえたらいいと思う
けれど、
しあわせといわれてほほえんでいる ほほえんでいる 腕をふりまわして叫びたいのを投げ出したいのを
ほほえんでいる
わたしの皮膚が ふくらんで、たとえばうろこに近づいていくから 夏が近づくのを知った。
見つめたくない。 泣きたくなんてない。
そう言っている言葉をつきやぶってやわく硬いわたしをこわして ひきずりだしたなまみを、ほんものの声をきいたとよろこぶひと 赤むけの皮膚はいたいのですよ 自己修復は、のろのろとしかすすまないのに こじあける手はいそがしく働いて わたしは ときどきとても くたびれてしまったとおもう
だれもいないひるまの天井をながめながら。
ほうりだした腕のおもたさや時間ののろまさや それでもココニイルコトに、ひとつひとつ 気づいては棄てて。
なにもわからなければ、らくに今日をすごせるだろか。
曇り日。
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