あたしはときどき東京へ行く。 月にいっぺんくらい、、、大好きなお洋服やさんとか 恋人さんに会うとかそういう他愛もない理由で だけどこの平坦でうっかりすると消えちゃいそうな自分からすると ものすごく重要な用件を抱いて、 東京へゆく。
土曜日に、荷物を持って、うちをでた。 あんまり体調よくないなと思いながら でもたのしみをけせなかったから。
今回は用事が三つあった。 ともだちとごはんを食べに行くことと お洋服やさんに入荷している小物を取りに行くことと 大好きな人形作家さんの個展を見に行くこと。
だけど なんだか
はじめのひとつを過ぎたところで あたしがおしまいになってしまい 丸一日以上横たわったまんまでいたあとに 全部の予定をキャンセルして帰ってきた、
というか
「おくりかえされてきた」
もうなんにも目に入らないで 東京の空はちいさくて色がうすくて寒そうだと思った。 沖縄に戻りたいなあとそうも思った。 カメラの中は、からっぽの日常が入っている。 記憶がこわれかけていて思い出せないから 撮らせてもらう、たいせつなひとの写真、おいしかったもの、 道端で見つけたすてきだったもの、そんなものが おいしまいになったあたしには、もう見えなくて ただ、寒い寒い寒いとだけ言い続けていて そうして、唯一トラウマな夢を見て泣きじゃくった。 あたしは汚れていると泣きじゃくった。助けてといって でも時間は誰にもさかのぼれないから、無駄な涙。
かえりみち。
これに乗れば強制的にうちまでたどりつける 電車のホームまで、送り届けてもらった 直前までずっと荷物を持ってもらっていた ふらふら、よろけっぱなしだったから
午後を少しまわったくらいの電車は ぬくぬくとしてとてもおだやかだったけど あたしはうまく椅子に座れないで ぐらぐらとしていた 新しいお薬の副作用とかいろんなものが うまくかみ合いながら、あたしを遠ざけていく。
行くときに買ったミルクティ、 結局、ほんのひとくち飲んだだけで 傍らの荷物にそのまま入っている。 携帯電話の中には嘘とリアルが交互につまっている。 熱っぽい頭と 裂けてしまってひりひりする喉と うまく定まらない視界と
よろける。
失格の烙印を押されたようで かなしかった。
夜
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