夜半の雨は まるで激情をほとばしらせるようにそこらじゅうを叩くから 家中をかけまわってガラス戸をしめる ぱしり、ぱしり、と はねあげていく鍵でなにを締め出したかったのだろう なにから隔たりたかったのだろう
ジェットコースターの轟音で あがった嬌声 落下していくのとおなじだけの速さで ぼくがぼくを、忘れる
おなじようにあなたもぼくを忘れ はやく遠くに行ったらいいのに ただしく、あるべきだった場所に 知り合わなくてもよかったはずの距離に ひとしく からだを並べて
ラベンダー、レモングラス、ローズヒップ、 R、L、R、 枕もとに並べようとした その手でぜんぶ薙ぎ倒す
髪の毛をなぜる手なんてほんとうはなかったと きちんと知ってはいた ただ少しだけ夢を みたかっただけだよ
いちにさんで目をさます 大きな風にさらわれる 臆病なまぶたは知らないことになさい きちんとその角をまがるには置いていかなければいけない さまざまな荷物の選別を 玩具をかたづけるように はじめて
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「どうしてごはんを食べなくてはならないのかさっぱりわからない」
「どうしていきていかなくちゃいけないのかも」
どんなに消極的な理由でもよいので あした、ぼくが、存在しても かまわないと結論付けてほしかった ぼくのなかの、誰か知らない確固たる動物に
首を締めたらくるしかったので からだは生きていきたいと言っているのだとおもう 傷口はあかくふさがってゆくので それでも修復はすすんでゆくのだとおもう
がんばれ、
と念じて、でも。
くるしいをしめださないでと うっかりなあたしが望んでしまったので くるしいことに 気がついてしまった
あしたの風。
あしたのひかり。
きれいとたのしいとうれしいがわからない。
泣きかけて日も暮れかけてから外へ出て行く 一週間に一度はなんでもよいから外へ行こう、と ちいさな約束をしたの、自分だけと。 誉めたりけなしたりされないところで。 ぎしぎしと歯が鳴って、元気を出そうとのんでみたミルクティは 錆びたみたいな味がした。泣きたくて泣かない。
はちがつのおわり やくそくはいらない
25日、深夜
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