『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2005年06月12日(日) いくつかの繭

くうはくのように思える朝
あたしのまなざしがとらえた
雲の谷間にうずもれるおひさま

シャッターをひとつ
巻き上げられるかすかな感触
音をとおして
ほら
また
見ず知らずの記憶をひとつ刻んだことに
安堵していますか

ねむるひとの規則正しいやすらかさ
ひゃく、にひゃく、いくらかかぞえる呼気が
少しずつ遠のいて
手放したんだ
立ちすくみながらそれに辟易していた
くりかえしこの髪に触れた
ぼくではありえないものの温度

逃げられない
逃せない

見上げたものは
すすけた色のあおい空
整列するビルのあいだ
はりめぐらされた道路の上の幅だけの
まっすぐに規則ただしいうす青の道
そこにあるけれどだれもみなかった
そうして鐘が鳴るよ
おうちへかえれと
いつか告げてくれたのと同じ音色で
ただ、みっつ、くりかえし
この背中を押すように

おうちへかえろう
おうちにかえりたい
だだをこねた幼女で
あればよかった


・・・・・・・・・・


あたし繭になる
そこにもどって
そうしてちょうちょにならない
究極のわがままを叫んだお嬢さん
きみの夢はたぶん
きみの手でつくりだす誰かが
あたためて孵してくれる

あなたじゃない誰かが

眠りこむまえに糸をひたすら
吐き出さねばならない作業とたたかうこと
細くつむがれていく糸は
しゅるしゅるとかすかにひかりながら空気をたどって
きみのからだをつつむだろう

ね、きっと
それはとても
きれいなながめにちがいない


・・・・・・・・・・


病院にはいってしまったあのひとのために
さまざまな手続きを踏みぼくが近寄ろうと
この足で歩いてゆくのを
あのひとは絶対に目にすることはできない
それはどこかとてもさびしくてしかたないことだし
同時にやすらかなことでもあって
・・・この断絶があるからきっとあたしたちやってゆけます
存在をおしえてくれたひとに
そっとちかいます
今はもうこの場所なんてみることはないだろうひとへ
感謝と、祈りをこめて

あたしたち最大限おたがいを
手放さないためになんとかやってゆこうと
思います

たいせつだと知ってしまったので
抱え込んだきのうの嵐がやまなくても
ゆめをみることで
ことばをつなぐことで
小さなテントをつくりたいと
ぱっとしない冒険の主人公にあたえられた武器は
どうやらまたしても、紙とインクとペンだけだった
キーボードさえも彼らにはふさわしくないと
ただ、紙とインクとペンだけ

この属性のめいじるのなら
ことばをころがすことを
あいしましょう
それをあなたが待っていてくれるなら
ぼくの時間なんていくらでもそそぐよ
風船みたいなぼくなんだから
いつぱちりと消えたって
こわくてかなしいけど不思議でなくて
でも
あなたが待っているから

足を棒にして一冊の本についてさがした数瞬
自分のためじゃなくてもいのちをつなげるのなら
りっぱなくらいの理由をもらいました


・・・・・・・・・・


だいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶと
いらなくなったおまじないを引っぱり出して虫干し、
彼方に突っ込んで置いてきた不安ものぞまない再開、
のみこみそこねた水を吐き出し
痛いと言い
たくさんのもうなくしてかまわなかったものに
ふたたび価値を与えてしまい

でもあたしことばを書く
いたいことしか言えないかもしれない
でもぼくがことばを書く
あふれてやまないから
息を吐くのと同じだけの親密さで

それはだれかにすてられることの覚悟と少しだけ似ていた
そんな気がした



6月12日−13日


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