こころがぜんぶこわれたらこのくるしいことも
なんにもかんじなくなって、それで
わたしはらくになれるかな
げほげほと咳をしてひとりであたまをかかえて
きいんと痛む胸の骨を手のひらでおさえる
深夜三時。
たとえばわたしはふとんのなかでよくわからない恐怖におびえてる
さもなければ蛍光灯の下で足りない酸素をかきあつめてる
そうして窓を開けてつめたい風でからだをひやしてそうして
窓枠を乗り越える
屋根ははだしの足のうらにきっととてもつめたいから
わたしはわたしが生きているということを
痛みじゃなくて知ることができるって
そんなばかな期待をしながらそのばかな行為をこころみる
窓枠を乗り越える
そうして、つめたい風にからだをさらして
ぜんぶ、こおりついてしまえばいい、
そう思う。
風はとてもつめたかった
でも、外の温度とひとつになるのは思ったよりも大変で
手をのばして外の空気に触れたのに
ずっとずっと触れたのに
指先がやっと凍えたくらいで、頬がやっと凍えたくらいで
わたしは、自分が恒温動物のはしくれだったことをいまさら思い出して
はだしの足を見下ろして、その先に並んだ10枚のつめを見下ろして
ぼろぼろ泣いた
涙はぼとぼと流れて膝やら胸やらをぬらしていって
きりもなかった
屋根を転がり落ちることはできない
なにがかなしいのかもわからない
ただ、泣くだけ。
深夜三時。
蝶になった夢を見た
蝶になったわたしの背中には
うすい桃色のひかりを放つまっしろな羽がついていて
わたしはそれで自由に空を飛べることができるはずで
だけど、夢の中で
わたしの羽は閉じられていて
わたしはぼろぼろ泣いていた
みわたすかぎり一面焼け焦げた木々の残骸
ぶすぶすと黒く煙をあげる森のなかに
たった一本のこった白いほそいほそい木の幹の
一枚も葉のついていないその白い木の根元で
わたしはぼろぼろ泣いていた
かなしいのかもよくわからない
ただ、みんなみんな燃えてしまったくろい焼け野原のなかで
わたしがひとりでいることだけが
くっきりと刻まれたほんとうだった
ろくでもない夢。
目を醒ましたら、そこは夢の外で
わたしは、ただ、
息を吸って吐くことが、くるしかった。
2月2日、深夜3時 真火
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