いきている価値が ぼくにはないなんて思いたくなんかないよ でもそれにどんどん引きずられていくのはどうしてなの 坂道を這いずって登っていくのに 気をゆるませれば腕の力は弱まってずるずるとすべる 下のほうにぱっくり口を開けて黒い穴が 笑っている笑っている笑っている 嘲っている
ねえ ぼくのいっていることはばかなことばっかりなのかな 誰ともさようならを言いたくないなんて ばかげたこどものタワゴトなのかな 年相応に大きくなれていなくって ぼくははやくそんなぼくをこの手でグサリと突き殺さなきゃ いけないのかな いけないのかな
音が怖くてどこにも出て行けなかった 光が怖くてなんにもすることができなかった 知らないひとの足音がこわくて 家族の立てる物音がこわくて 廊下を歩く足音、トイレに吸い込まれていく排水の音、 指までも縮めてふとんの中だけで目を開けていた ぼくはやっぱり このせかいにいらないにんげんなのかな
お守りがつぶされて消えてく 大事にしていたおんがく たいせつだったことば 何とも引き換えにできないとおもっていた ぼくがぼくであるために必要だった たくさんの考え方、たくさんの方法、生きていくやり方、 誰かとのつながりを求めて求めてそうして手に入れようと 少しでもいいよ、近づこうと 必死になりながら作ってきたひとつひとつのぼくのお守り
さようならなんて言いたくない もう誰も、いなくなってほしくない
あっさり つぶされていく あっさり 消されていく
笑いながらでもそれができる人があんまり多いからぼくはもう ひとりでかなしいの塊になって夜の中につぶれていきそうだよ
「だれかたすけて」
引きずり落とさないでよ わらいながらぼくのことをころさないでよ 知らないという究極の言い訳を武器にして ぼくのことをころさないでよ
鼻と喉をふさがれてそのうえ首をしめられて もうあとは 目を見ひらいてぼろぼろと泣くくらいしかできることがなかったよ ずるずると黒い穴に食われて腕を刺し続けたいとおもったよ お酒を飲んで安定剤をのんで眠り薬を飲んでねじふせるように眠ったよ ばかなことばかりしているばかなぼくだよ あなたの言うとおり 病気と言う名前を隠れ蓑にしてただぬるま湯につかっている 意志のよわいばかなぼくかもしれない、しれないよ
それでもぼくは 生きていたいんだよ こんなぼくだけど 生きているんだよ
笑いながらころさないでよ 笑いながらこわさないでよ ぼくの大切なものを ぼくが今生きていくのに必要なのに
そんなにあっさりとその口でその言葉で ぼろぼろのゴミみたいに取り扱わないで あなたの目にはクズの塊でも ぼくにとっては命の支えなのに
元気なのは見せ掛けだって見抜けないならそれはあなたの目が節穴なんだって ふつふつと燃え続ける炎みたいに怒りのことばを叩きつけられたら どんなにかよかっただろう どんなにか、ぼくは 今と違うものになれたろう
だけど、ぼくは、ぼくだから こんなばかなぼくでしかないから
這い上がれ 這い上がれ
あいつになんて食われないように しっかりと指に力をこめて
生きていくって決めたんだから そう、約束、したんだから
10月21日、深夜 真火
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