『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2003年08月05日(火) つめたいみず

だれからも声のとどかないところにぼくがいたら
どんな電話の音がひびいても受話器をとりあげなかったら
さびしいという心はどんどんしずかになって小さくなって
しまいには死に絶えてくれるんじゃないだろうかとひそかに期待をしていたので

だれからか呼び声がかかるのを待っていたらだめだ
自分から呼びかけていかなければいけないと
よく言うし言われるしそれは正しいことのようだけれど
つねに呼びかけ続けてきた気のするぼくは、正直なところ
なんだかもうくたびれてしまったみたいなんです

……そんなことば聞きたいひとがどこにいる

たくさんのひとの話をききました
たくさんのことばを聞きました
たくさんの涙を見ました
たくさんのひとがぼくの前でたくさんのことをむきだしに話して
そうして泣くのをやめてまた自分の生きるところへ帰っていきました

ぼくは、語られたたくさんのことばについて考えていました
ながされた涙のことについて、心の中にしまいながら
ここ幾年かそれもしくはもう少し長い時間をひとのことばや泣き顔と一緒に
こっそり抱えて

「話したいことがあったらいつでもぼくはここにいるよ」

そういうのがぼくだと思って
そうするのがぼくの役目で

自分はみおくる者なのだといつの日にか感じました
紺色の制服のプリーツがしわしわになって日が暮れても
それでもまだ誰かのことに耳をかたむけていたころ

ぼくは見送るひとなんだと
そうしていつか
置いていかれるものなんだと
そういうふうにできていると


何を話したいかわからなくてどんなことばなら伝わるのかわからなくて
時間なんて無制限でいつまでたったら自分のなかみがきれいに整理できるのか
わからないわからないことだらけでただ出てこない涙だけいっぱいになっていて
そこに穴をあけようとして

……そうやって、だれかが、やってくる
ぼくはいつも、スタンバイしていようと思った
いつかやってくるきみのために


そうして


ひとりひとりが消えていく
タイミングよく遠くへといってしまうひと
ひっこしをしてゆくひと
病院へいってしまうひと
学ぶことに追われてゆくひと
働くことでいっぱいになってゆくひと
そうしてぼくが
少しずつ喰われたあとのこころの残骸をある日みつけてしまって
ぱったりと動かなくなって毎日しずかなこころでするすると泣いた
動いていた手が動かなくなる
回せていた首が傾かなくなる
ざらざらとテーブルの上に錠剤を並べてむかいあってみる
黄色も白もピンクも肌色もいろんないろのおくすりだった
これだけでぼくのいのちはのびてゆくの?

ことば、だれかにただ聞いてほしいと思ったら
いつも誰かのことばをすいとりつづけてきたわたしの前には
だれもいなくて、なんだかとてもわたしは
かなしいみたいな気持ちになったけど

それは、役目より外のことを、求めようとしたからなのかなあと、ぼんやりとも考えて


夏の夜はふあんがどんどんふくれていきます
それを片付ける方法を教えてなんて言わないから

きみをほしがってもいいですか


NOということばが100倍になって体の上におおいかぶさってくる日々



8月5日、深夜  真火


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