『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2003年07月23日(水) 絵空夜半

すべてのぜんぶが思いちがいで

ぼくひとりの遊びなのなら

満たされないと嘆くこともまたひとりあそびにできるだろう

その場所にゆきたくて

ゆきたくて誰かがもがいている今もきっと

道化師になりえない普通人になりえず

たくさんの食物とたくさんの足掻き

続々とつくりつづけるえそらごとのことを嘲いながら

並べていく

あかい林檎、無名の詩人、散って腐ったさくらの花弁

それら無数の記憶をたぐり

ただふらふらとつぶやくこと、おなかがすいた

わたしは飢えてしかたがない


くうはくを埋めたいと食べものをつめた

くうはくを埋めたいとことばを吐きちらした

ぽっかりと口を開けたきみには歯がなかったが

なにも噛み砕けないことをきみは認めはしなかった

ぶどうパンをちぎって与える

やわらかくつぶれてゆくパンの生地はふつふつときめこまかく

歯のない喉の奥に消えていったけれど

その先で

どろりどろりと溶けたあと

血となり骨となり肉とかわるのだと言われても

それは天上からただ落ちてくる神様のことばのようだった

ただ、降り落ちるだけのえそらの言葉


くうはくを埋めるために食べものをつめ

くうはくを嫌いながらことばを吐いて

吐いて吐いて吐きつづけたとき

すでに誰もがそこにいないことをぼくの目は見た

頭脳のうちがわはたやすく暗転する

それを食い止めようと

きみは泣き笑いそうして叫ぶ

このひるまにつぶされないほどのあかるさを身に捉えようと

さすればいつか

流れる血が紅いということに癒されるぼくを

醜いと感じることもできるだろう

かぎりなく愛しく思うこともできるだろう


血液の抜けたくうはくから

足りないものをさがしながらぼくがそこらじゅうをうろついた

台所も玄関もお風呂場もトイレも机の下も

冷蔵庫の中ものぞいてしまった

飲みのこしの牛乳壜、トマトのきれはし

いつか見失ったきみのなかに潜むぼくのかけらをひきずりだせたら

なみなみのグラスのなかにそれをひたして

ぜんぶが夢だったと乾杯して笑おう

そうして遊ぼう

ぼろぼろと泣き

塩気をふくむ水のこぼれおちる速さを

熱くいたむ頭のかたすみで数えながら


そしてぼくはまたつかみあげつめこむ

膨らみ続けてゆく胃袋を憎み

くうふくを知らない食べものをつかみ

ひつつまたひとつ並べてゆく規則ただしいものどもの羅列

満たされることをしらないことばを投げつけ

開いただけこぼれおちてゆく記憶を持て余し

投げつけ

また封じ込め

そして首を絞め殺すようにくちびるを閉ざし

飲み干してゆくのがいいのだと悟ることができるなら

もう何もぼくを求めて探さずともよいのなら

ペンを捨て、ことばを捨て、食べ物を咀嚼する歯の不在を

あらゆることを忘れたらいい


投げつけ

封じ込め

消し去って

けれど涙が枯れないとふくれあがる水を止められず

動くことなしにこの無人の夜に座っている

おろかなぼくを笑うしかないなら


こじあけろ

そして投げつけろ

いつの日にか、あなたにそれが届くなら


いつまでも

いつまでも




7月23日、雨の夜


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