桜も散り、昨日は暑くて扇いでいたほどなのに、今日は朝から雨で震えそうに寒い。 もうつけることもないと思っていたこたつに、またぞろ足を突っ込む。 この頃、昼暖かくても夜寒い、昨日暖かくても今日寒い、の連続で 薄手のコートで出かけちゃ、襟を立ててくしゃみしながら帰ってくる、 エマール仕上げでしまい込んだセーターを、出しちゃ引っ込め、引っ込めちゃ出し、 そんなことばかり繰り返している。 暑いよりは寒い方がまだ凌げるが、こう寒暖差が激しいと今に体調を崩しそうだ。 フカフカ毛皮を着込んだもんでさえ寒いのか、隙を見てこたつに潜り込んでいた。
寒いし、雨は止まないし、こんな日は出かけたくないなぁ。 もんの食料はふんだんにあるのに、飼主の冷蔵庫はスッカラカンだ。 外食ばかりで全然気付かなかった。中で冷えているのはビールにチーズ、チョコレート…。 夕食の代わりになるものはないかとキッチンの戸棚を空けたが、粉と乾物があるばかり。 冷凍庫を漁ると、3パック千円で買った海老と豚肉と鶏肉が。おおやった♪ 豚肉を玉ねぎと炒めて生姜焼きはどうだろう。…生姜が切れていた。 海老。炒飯をこさえるには、先ず米を炊くところから始めねば。面倒くさい。
という訳で、鶏の唐揚げに挑戦してみることにした。 油も“固めるテンプル”もあるというのに、揚げものは初めての試みである。 何故か。それは、人が来て作ってくれたことがあったからに他ならない。 そうだ。30年以上女をやっていて婚姻歴までありながら、如何せんまともな主婦業の 経験がないもんで、自分ちで揚げものひとつやったことなかったんだアタシ!(^m^;) 粉は、友人が置いて行った“日清の唐揚げ粉”が残っている。 これをビニール袋にあけて、肉と一緒に揉めばいいのか。うん出来るぞ。 ほんで?油を温めて揚げればいいだけでしょ。あらやだ簡単じゃん。
確か、油は温度が高過ぎると表面だけ焦げてしまうんだったな。 きれっぱしを落として、浮いてきたら適温なのよ。エライ、ちゃんと知ってた。 手を滑らせてはねた油で火傷しないよう、こわごわながら粉をまぶした肉を浸す。 だが、どのくらいで引き上げれば良いのか、その加減が分からない。 火を通し過ぎると硬くなるし…。適当なところで油から上げてかじってみると プリッとジューシィではあるが、中がまだほんのり桃色である。 やや!揚げが足りない。牛肉はいいけど、豚や鶏はナマだと当たっちゃうんだ。 そして、一度揚げた鶏肉を再び熱い油に沈める。 じゅうじゅう泡が立つのを箸でつついているうちに、お惣菜屋で売られているような こんがりした狐色の唐揚げになってきた。 まあおいしそう。これ、全くの初めてにしては結構上出来ではなかろうか? キッチンペーパーがないのでコーヒーのフィルターで代用し、器に盛る。
…あら? 肉は大きなパック一杯に入っていたのに、何だか量がやけに少ないような。 鶏のというより、居酒屋で出される軟骨の唐揚げみたいだ。 こんなもんなのかしら。熱で縮んでしまったのかしら。 出来合いを食べるだけだから知らなかったが、多分唐揚げってこんなものなんだろう。 色は、見るからにちゃんとした唐揚げ色だし。 さあ、出来た出来た!残った油にテンプルの顆粒を溶かし、唐揚げをこたつへ運ぶ。 缶ビールを取り出し(おっさんか)、熱々をぱくっ(^〜^)
…あら?? おいしくないわ。
変だな、外はさくっと中はジューシィの筈なのに。 味見をした時にはプリプリしていたのに、今出来上がったものを食べてみると 硬く縮んでパサパサになっており、まるで消しゴムを噛んでいるみたいなのだ。 また、衣も妙に油っこいだけで、あの唐揚げ粉本来の味がしない。
長く揚げ過ぎたのだろうか。友人に電話をする。
『そういう時は、最初に1個だけ揚げて加減をみれば良かったのに』 「だってお腹空いてて、早く食べたかったんだもん」
『中がちょっとくらいピンクでも、おいとけば余熱で白くなるんだよ』 「じゃあ、先に味見した時の、あれで良かったんだ…」
『揚げものひとつ満足に出来ないのか(爆)』 がーーーーん。
キーーくやしい!男にこんなこと言われて! てゆーか、こういうことは女に訊けば良かったんだ。失敗した(T_T) そう言えば、家庭科の調理実習では、いつも洗いものを買ってでて 肝心の調理には殆どタッチしたことがなかったのだった。 そのツケが今…。
『オルフェウスの窓』を読むと、ユリウスとアレクセイのこんな会話がある。
お腹空いてない?台所にぼくが作ったシチューがあるよ。 シチューよりお前が食べたい。
ユリウスの作るシチューも、きっとまずいんだな。フフ…
こんな小さくなっちゃって(-_-;)
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