“フランス王家3人の貴婦人の物語展”を観に、新宿の伊勢丹美術館へ行った。 日曜日でしかも最終日とあって、混んで混んで殆ど観た気がしなかったが。
「3人の貴婦人」とは、寵姫ポンパドゥール夫人、王妃マリー・アントワネット、 そして皇后ジョゼフィーヌである。狭苦しい館内は、アタシ同様ぎりぎりに 駆けつけた観覧客(大半が女性)で既にごった返していた。入り口から延々続く 行列はちっとも進まず、人垣の後ろから伸び上がって観たり、やっとこさ 絵の前に立っても、近眼ゆえに細部がよく鑑賞出来ない。ああ、ストレス!!
美術館の規模からも察せられたが、展示内容は乏しく、大した目玉はなかった。 ジョゼフィーヌに興味はなく、ポンパドゥール夫人の肖像画もパッとしない。 それにもともと目当ては絵画のみであったから、ちょっと勿体無いことだが 早々にこの人ごみを脱するべく、今回はあえて観なかった展示品も多い。
油彩の肖像画は、どれもニスがテカテカと照明に反射して見づらかった。 初めてまともに観た、ルイ15世妃マリー・レクザンスカの肖像に少々感動。 王妃でありながら地味で、歴史の表舞台には殆ど登場しなかったからなぁ…。 ヴィジェ・ルブラン描くアントワネットは、顔からはみ出さんばかりに眼が大きい。 どうもロココ期の肖像画は、リアルに描かれているようで、そうでもないような。
圧巻は、ロケットに納められた、アントワネットのものといわれる髪の毛の房と “コンシェルジュリーを去るマリー・アントワネット”(ジョルジュ・カン筆)だろう。 カンは後世の画家であるが、人物の描き分けが冷徹で、ロココの画家とは 比較にならないデッサン力である。実際に見たままを描いたのではないかと 錯覚を起こさせるほどであった。後ろ手に縛り上げられ、ぐっと頭をもたげて 荷馬車に向かって進む王妃の横顔の、高い鷲鼻や顎の線、断ち切られた髪に 衣装などは明らかに、ダヴィドのスケッチが基になっていることが分かるが あの飛び出しそうに大きな眼はまた、ルブラン夫人の肖像画から窺える通り。
この絵の前で、恐らく5分以上は釘付けになり、立ちすくんでしまったろう。 「早く進め」と後ろからせっ突く若い女性を睨み返しながら…(`_')☆
|