エロとピンクとアミタイツ。
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2006年10月16日(月) 『飲み込まずに出してください』

「ここから飛ばないでください」

ある高台に貼ってあった貼紙だ。
ここの貼紙を読んで分かることは、
かつてここから飛んだ人がいるということだ。

巷には注意の張り紙が溢れている。

「エサをあげないでください」
「走らないでください」
「ガラスを割らないでください」
「カメを驚かさないでください」

それを書かねばならない理由はただひとつ、
書かなければそうしてしまう人間がいるということだ。
そしてそれは、
動物に勝手にエサをやり、
むやみに走り、
ガラスを割り、
カメに向かって大声を出す人間が
かつてここに現れたという歴史の表れでもある。

トイレのシンクにたびたび貼ってある、
「この水は飲料水ではありません」
という貼紙を見るたび、
毎回「飲まねえよ」と思うのだが、
そこから伺えるのは、
誰かがトイレの水を飲み、しかも体調不良を訴えて
事態が明るみになったという歴史だ。

「橋を壊さないでください」
この貼紙からは、一度この橋が何者かによって壊されたという過去、
そして修理されたか新しく作られたか、
どっちにしても二代目以降であるという事実が伺える。

私は貼紙が好きだ。
文面が細かな指定をしていればいるほど、
かつてその場所で起こったことが詳細に伝わってくる。
貼紙を見つけると、いつも私は嬉しい。

「ロープを引っ張らないでください」
「つぶさないでください」
「蓋は、食べれません」

かつてそうしてしまった人のことを思うのはなかなか楽しいものだ。
良い貼紙はすぐに写真をとることにしている。
ただ、カンボジアの山頂で見かけた
「子どもを買春しないでください」は
なかなかヘビーなものがありましたが。

「立ち止まらないでください」
ある場所にはそう書かれていた。
あえてそう書かねば誰もが立ち止まってしまうような
魅力的な場所なのかもしれない。
しかし、なにしろそこでは立ち止まってはいけない。
絶対に怒られる。
かつてそこで立ち止まった人も、怒られたに違いないのだ。

今日の自分の行動を省みる。
どこへ行った?何をした?
もしかしたら、今日私も行動いかんで、
どこかに貼紙を増やしているのかもしれない。
そう思うと、ちょっとワクワクする。


小日向マリー |MAIL

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