お能を観てきました。 今回は「乱能」。 私も3ヶ月ほど前に予約をしたときには、「乱能」がどういうものなのか知らなかったのですが、かなり通好みの能でした。 しかもお能には珍しく指定席ではなく自由席だったので、開場1時間前に着いたのですが、すでに長蛇。ご年配の方は朝が早い…。 でもなんとかいい席をとれました。
能は普通、シテ方・ワキ方・囃子方・狂言方の三役七業種に分かれていて、他の業種を兼ねることはありません。 しかし、この「乱能」は「乱」のとおり、役や業種を取り替えて演じるものです。 今回は鎌倉能舞台35周年記念講演ということで、「いわば楽屋内の学芸会(中森晶三氏談)」のようなこの舞台が実現したようです。 とは言うものの、本職の忙しさを縫って、本職とは異なる業種の練習をすることはとても大変なことで、昔は初午の節会に必ず行っていた乱能も、現在ではかなり珍しいものだそう。
と、難しいお話はここまで。
演目は 能 小鍛冶…先日と演出が異なり、お稲荷さまが白髪で迫力が。 舞囃子 屋島…源平合戦をベースにした修羅物。滅びの美学。 狂言 呼声…居留守人をあの手この手で呼び出す話。掛け合いに爆笑。 仕舞 二人静…風雅でしたが、微妙に二人が合ってなくて漏笑。 仕舞 舎利…地謡(本職シテ方)さんたちが、ナイスミドルばかりvv 舞囃子 吉野天人…天人の着物がとても素敵。踊ると裏地が見えセクシィ。 能 土蜘蛛…有名な投糸の場面で調子にのり投げすぎ。でも豪華です。 一調 夜討曽我…一調は本職の人が行うのも難しい高等テクの囃子。 一調 花筐…この方々が本職じゃないなんて、と絶句。拍手喝采でした。 狂言 蝸牛…でんでんむし探しの話。昔は珍獣だったみたいです。 能 融…後シテの融大臣(とおるのおとど)の月下の早舞が絶妙。
休憩なしの5時間半、ぶっ通し。 おばちゃんたちは、時々外で休憩したり、お昼をとっていたみたいですが、私はもったいなくてずっと座りっぱなしでした。
本職顔負けの舞や演技や囃子をする方、あまりにも情けなく本職の方に扇で拍子をとってもらっている囃子方さん、切戸(舞台奥の小さい戸)からこっそり出てきて写真を撮りまくる方、それに向かって演中にも拘らずポーズとって静止する方、台詞を忘れていきなり「一夜漬けにて覚えしが〜やはり忘れて失せにけり〜」なんて勝手に台詞を変えちゃった方。 会場はその都度爆笑と拍手。 ほんとに学芸会のようなのりでした。
前の席のご夫婦が「あらK先生(本職は観世流シテ方)、今日は囃子をするのね」とか「あの子方のSくんって、N先生の息子さんでしょ。大きくなったわ。先生も安心ね」とか話していました。 ほんとに学芸会みたいです。
こんなかんじなので、観に来る方のほとんどが関係者(お弟子さんとかその家族とか)。 隣のおばさまに「ご家族がどちらかのお弟子さんしてらっしゃるの?それともあなたが女流に通われているの?」なんて聞かれました。 どちらでもないと言うと、「あら、あなたお若いのにいい趣味しているわ。しかも乱能に来るなんて、通ね」と言われました。
今日で、お能のおもしろさを再度実感。 いいものに出会いました。
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