寒さが和らぎ、温かなものに包まれている気がして、はっとなった。
目を開くと、片側だけが開いた鎧戸の、窓の向こうに白い光。 一瞬、自分がどこにいるのか分からなくて、記憶をめぐらせる。 ここはどこだろう? 暖炉の前に座っていた。それから、扉を叩く音がして・・・ 不安に押しつぶされそうな胸のうちがまた、酷く騒いで。 夢と現実の境界はあまりに曖昧で。
何がどうなったのか、わからない。 ただ、彼がいない。 抗い難い喪失感に、思わず涙がこぼれた。 「ふ・・・う・・ぇ・・・」 堪えても、嗚咽が漏れるのを止められない。 寂しい。怖い。不安で、心細くて、苦しい。 こんなにも、逢いたいのに。 「――どうした? 怖い夢でも見たのか?」 唐突に、声をかけられ本当に吃驚した。 右を下にして横臥した自分を、後ろから優しく抱きしめる腕がある。 そして、聞き紛うことなどあるはずのない、声。 反射的に身を起こして振り返ったそこに彼はいた。 気遣うように様子を伺い、だがすぐに、悪戯っぽい笑みを浮かべて 「ただいま」と。 「おかえり・・・なさい・・・」 咄嗟に答えて、戸惑いながら手を伸ばした。 確かめるように、前髪に、頬に触れて。 その指先を、強く、優しく包む手。 言葉は声にならなかった。
自分は一体どんな情けない顔をしてしまったのだろう。 少し、傷ついたような笑み、 優しく抱きしめる腕。 すぐそばで感じる鼓動と息遣いは、紛れもない現実で。
彼は小さくゴメン、と囁いて 微笑んで、キスをして。
約束の日は、1日過ぎている。 だが、そんなことは、もうどうでもいい。 無事に帰ってきてくれた。 それだけで、辛かった全てが、既に大したことではなかったように思えて。
そばにいるよ――
幼い頃に交わした約束。 それが、永久のものではないということくらい、分かっている。 ただ無邪気に、そんな約束を振りかざせるほど もう幼くはない。 けれど、それでも、どうか――
何度でも、願う。
これからも、ずっと――
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